2012 Fiscal Year Annual Research Report
視聴覚統合における情報処理の特性と知覚変容との関連の実験的検討
Project/Area Number |
12J04354
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹島 康博 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視聴覚統合 / 視聴覚相互作用 / 注意 / 大脳半球機能差 / 視野非対称性 / Cross-modal correspondence |
Research Abstract |
本年度は,視聴覚統合による知覚処理の効率化のメカニズムを検討するために,心理物理実験を中心に研究を実施した。 まず,ピッチが変化する音を同時に提示することにより,運動方向の知覚が変容する現象を利用し,上下の視野にそれぞれ刺激を提示して検討を行った。その結果,下視野ではピッチが下降する音によって下方向への運動方向知覚の変容現象が見られた。一方,上視野ではピッチが上昇する音によって上方向への運動方向知覚の変容現象が見られた。上下いずれの視野においても,視野の周辺へと向かう運動方向の知覚変容だけが生じていた。これは,視野の周辺は中心と比較して視知覚の鮮明さが劣るため,視覚情報の信頼性が低くなることから,信頼性が低くなる視野方向への知覚変容が強く生じると推測される。 さらに,視聴覚統合と注意機能の大脳半球機能差との関連を検討する実験も行った。アルファベットを妨害刺激として,その中に数字を2つ標的刺激として提示し,さらに2番目の標的と同期して聴覚刺激を提示した。先行研究より,聴覚刺激を提示することによって2番目の標的の検出や同定成績が向上することが示されている。数字を同定する課題と数字の位置を応答する2つの課題を実施した。その結果,数字を同定する課題では右視野で,位置を応答する課題では左視野で音による正答率の向上効果が見られた。右視野を司る左半球は言語刺激の処理に優れているのに対して,左視野司る右半球は空間処理に優れているため,聴覚刺激は優位性を持つ半球の処理を促進する働きがあると推測される。 これらの研究の結果より,視聴覚統合には物体の複雑さだけでなく,情報の信頼性や大脳半球における処理の優位性も関連していることが明らかとなった。また,従来のある感覚の処理が劣る部分を他の感覚が補う効果だけでなく,優位な感覚処理を他の感覚がさらに強める促進効果もあることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により,情報の信頼性や注意機能の大脳半球機能差が視聴覚統合に影響を与えることが明らかとなった。したがって,視聴覚統合における知覚処理の効率化のメカニズムについて詳細な検討を,理物理実験を中心に行うという本年度の目的は果たしているといえ,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の年次計画のとおり,次年度は視聴覚統合における知覚処理の効率化のメカニズムを,脳神経科学的観点から検討を行う。本年度の研究によって明らかとなった注意機能大脳半球機能差との関連を,時間解像度に優れているERPを用いて検証していく予定である。また,物体の複雑さ以外にも,物体の構成要素数や空間周波数もまた視覚処理において負荷を生じさせるため,心理物理実験を用いて視聴覚統合との関連の検討を行っていく予定である。 さらに,本年度の研究の論文はまだ投稿中であるため,より多くの論文が受理されるよう,実験だけでなく論文作成にも引き続き力を入れていく。
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Research Products
(9 results)