2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04390
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
天田 悠 早稲田大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 医事刑法 / 治療行為 / 医的侵襲 / 自己決定権 / 同意原則 / 人間の尊厳 / 専断的治療行為 / 治療的実験 |
Research Abstract |
本研究は、医的侵襲が刑法上正当と評価されるために充足すべき要件およびその内容、各要件同士の相互関係を明らかにし、(医事)刑法における治療行為の正当化理論(以下「治療行為論」という。)の体系化および精緻化を目的とするものである。 以上の研究目的に従い、平成24年度は、当該理論モデルを構築するさいの比較対象を得るために、ドイツ刑法における治療行為論の歴史的展開、とりわけ、同国における刑法改正作業に関する議論を主たる分析対象に据えた。まず、特別研究員奨励費の助成を受けて収集した18世紀末葉以降のドイツ治療行為論に関する文献資料に基づき、同国における刑法改正作業の起源から到達点までを統一的に分析した。ドイツでは、「患者の自己決定権」の発露としての同意原則が判例上定着をみている。しかし、医師の治療行為と無頼漢の傷害行為とを構成要件上同視し、違法性段階で正当化を試みるという判例の立場に対しては、学説上批判も根強い。ドイツでは、こうした判例・学説の相克を立法的に解決すべく、19世紀初頭以降、「専断的治療行為」構成要件の新設が恒常的に提案されてきた。平成24年度の研究は、以上のようなドイツの議論を概観したうえで、その現状と課題を析出し、次年度以降に、諸外国法(スイス法、オーストリア法など)、日本法との比較・検討を行うための基礎研究を行った。 なお、この研究成果は、拙稿「ドイツ刑法における治療行為論の歴史的展開(一)(二・完)-刑法改正作業を中心に-」早稲田法学会誌63巻2号(2013年3月発行)1-40頁、同64巻1号(2013年10月発行予定)頁数未定(掲載確定)として結実している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題で掲げた理論体系を構築するための基礎研究を行い、その成果を学会誌上で発表した。また、研究課題に関する外国語文献を翻訳し、その成果を一部公表した(たとえば、グンナー・ドゥットゲ(甲斐克則=福山好典=天田悠訳)「医師法における承諾能力というカテゴリー―ドイツ法のパースペクティブから見た基本的な疑問―」比較法学(早稲田大学比較法研究所)46巻3号(2013年3月)、201-218頁)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ドイツの刑法判例・学説に主に焦点を当てて、同国の理論の歴史的展開を分析する。なぜなら、ドイツ刑法改正論議に影響を及ぼしたであろう判例・学説の歴史的発展過程を明らかにするという作業も、当該理論の体系構築を図るうえで不可欠のものであると考えるからである。この作業を経てはじめて、わが国の議論とドイツのそれとを照合する素地が生まれよう。また、以上の研究と並行して、スイス法、オーストリア法に関する文献資料の収集を行い、次年度以降の研究に備える。
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Research Products
(2 results)