2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04390
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
天田 悠 早稲田大学, 法学研究科, 特別研究員DCl
|
Keywords | 医事刑法 / 治療侵襲 / 医的侵襲 / 患者の自己決定権 / 同意原則 / 医師の説明義務 / ドイツ / 傷害罪 |
Research Abstract |
1. 研究目的 本研究「医事刑法における治療行為論の歴史的展開」は、医師の治療行為が、刑法上正当と評価されるために充足すべき要件およびその内容を歴史的・比較法的なアプローチから明らかにし、治療行為の正当化理論(治療行為論)の体系化および精緻化を目的とするものである。 2. 研究方法 平成25年度の研究においては、当該理論を構築する際の比較対象を得るために、ドイツ刑法における治療行為論の歴史的展開、とりわけ同国における判例・学説の議論を分析対象とした。まず、特別研究員奨励費の助成を受けて収集した18世紀末葉以降の関連文献に基づいて、ドイツの判例・学説における議論を、いくつかの時期に分けながら整理した。そして、ドイツ法における議論の現在地を位置づけたうえで、これまでのわが国の議論に欠けていた視角が何であったのか、を明らかにした。 3. 研究成 ドイツでは、違法性段階で問題の解決を図る正当化モデル(治療行為傷害説)が判例上定着をみているが、医師の治療行為を傷害構成要件に基づいて処理する判例のモデルに対しては根強い批判がある。そのため、治療行為は傷害罪の構成要件に当たらないとする構成要件モデル(治療行為非傷害説)が、一部の学説から支持を得つづけている。本年度の研究では、以上のようなドイツ法の議論の到達点を明らかにするとともに、そこでの課題を析出した。なお、この研究成果は、拙稿「治療行為論の史的考察(一)(二・完)――ドイツ刑法の判例・学説を中心に――」早稲田法学会誌64巻2号(2014年3月)57-101頁、65巻1号(2014年10月発行予定)頁数未定(採録決定済)として結実している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題で掲げた理論を構築するために、本年度はドイツ法の分析を行い、その研究成果の一部を所属大学の紀要等において公表した。また、本研究課題に関するドイツ刑法の判例研究を行い、その成果を公表した。さらに、ドイツ・アウグスブルク大学で開催されたシンポジウムにおいて、研究報告を行う機会を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって、「身体傷害」概念の意義・射程をつねに念頭に置いて解釈を行うドイツ法の基本的姿勢が明らかとなった。この成果を踏まえて、今後は、ドイツ現行刑法223条の傷害罪が制定されるまでに、判例・学説において、どのような議論が展開されてきたのかを明らかにし、(とくに傷害罪の)法益論と関連づけつつ、従来とは別の視角からこの問題に取り組む予定である。
|
Research Products
(14 results)