2012 Fiscal Year Annual Research Report
12~15世紀中国における華北・江南の政治的統合過程
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12J04404
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
小林 晃 財団法人 東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 南宋 / 軍閥 / 制置使 / 公田法 |
Research Abstract |
平成24年度は研究計画に基づき、中国南宋時代後期に対モンゴル最前線に設置された制置使(対モンゴル防衛軍の司令官ポスト)、および制置使麾下の軍隊の軍糧を賄うために施行された公田法(浙西地方の大地主の土地を国が買い上げ、官田とした法律)について研究を進めた。近年ではモンゴル・南宋の南北対立の時代、およびその解消過程に注目が集まっているが、制置使および公田法についての研究は、南宋がモンゴルに対していかなる対抗策を講じ、それが当時の江南社会にいかなる影響を及ぼしたのかを明らかにするであろう。そしてかかる成果は、中国本土の南北分裂がいかに解消され、明朝へと収斂していったのかを明らかにするための大きな手掛かりになるはずである。 以上のような重要性が見いだされるものの、制置使の権限や役割などを具体的に述べた史料は非常に乏しく、また公田法についてはすでに周藤吉之氏による詳細な先行研究が存在している。そこで制置使や公田法について先行研究とは異なった視点から研究を進め、新たな歴史的事実を明らかにするため、平成24年度は主に日本で見ることのできない史料を、中国の漢籍収蔵機関において調査・収集することに注力した。その結果、近年中国浙江省で発見された『武義南宋徐謂礼文書』所収の公田法関連の文書をいち早く研究に利用することができたほか、南京図書館においては朱元龍『宋待制徐文清公家伝』なる史料に出会えた。『宋待制徐文清公家伝』はこれまで研究にほとんど用いられてこなかった史料であるが、制置使が対金最前線に設置され始めた嘉定年間の政治史を検討する上で重要な記述が含まれていた。 以上の研究活動によって、晩期の南宋王朝では前線地帯の軍事・財政・民政の大権を掌握し、半軍閥化しつつあった制置使に対する警戒感が高まりつつあったこと、そして公田法こそは浙西で産出された大量の米穀を南宋中央が掌握することを通じて、制置使とその麾下の軍隊を統御するための政策であったという見通しを得た。平成25年度はこの成果を研究学会などで積極的に発表することになるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
9の研究実績の概要でも述べたように、平成24年度は主に史料の調査・収集を行い、史料不足という研究を進める上でぶつかっていた壁を乗り越えるための手掛かりをえることができた。本研究はまだ公の場では後悔していないものの、平成25年度は6月22日に慶應義塾大学の三田史学会大会にて、9月2~3日"宋代政治史研究的新視野"国際学術研討会において発表する予定であり、研究は大いに進展していると評価できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は制置使・公田法についての研究成果を学術論文として学術雑誌に投稿するほか、中国で史料調査・史料収集を行った際に発見した四明史氏(南宋時代に宰相を複数輩出した名族)に関する史料を用いての南宋明州の名族研究、および公田法施行後の公田(官田)がいかに元朝・明朝政権に掌握されていったのかについての研究などを行う。さらにこれらの成果を踏まえたうえで、明州の名族が元朝から明朝初期にかけてどのような展開を見せていったのかを検討し、さらに明朝永楽時代の政治史を検討することによって南北中国の再統合過程を追うことにしたい。その場合にはこれまで用いてこなかった『明実録』などの史料を活用することが必要となる。こうした史料の扱い方については、今年度中から徐々に慣らしていかなければならないであろう。
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Research Products
(2 results)