2012 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム思想における存在一性論学派の展開 オスマン朝期の神秘思想と改革思想
Project/Area Number |
12J04437
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 春香 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スーフィー / オスマン朝 / 存在一性論学派 / シャアラーニー / イブン・アラビー / 完全人間 |
Research Abstract |
本研究の目的は、16世紀のオスマン朝下エジプトにおいて活躍した法学者兼神秘主義思想家(スーフィー)であるシャアラーニーの思想を、アラビア語の一次資料を用いて分析し、イスラーム思想史上の彼の思想の意義を問うことにある。シャアラーニーは、13世紀に活躍したスーフィーであるイブン・アラビーの学統(存在一性論学派)に連なる人物だと言われてきたが、その具体的思想はこれまで明らかにされてこなかった。本研究の意義は、分析の立ち後れてきたシャアラーニーの神秘主義思想を考察することで、オスマン朝下の存在一性論学派の思想理解に新たな視座をもたらすことにある。採用第一年度目の目標は、研究に必要な資料を現地調査を通じて収集することと、博士論文執筆に向け研究内容を一層具体化することであった。そこで採用者はまず、夏期にトルコのスレイマニエ図書館にて写本の所蔵調査を行い、未入手の著作を複数入手した。秋にはイギリスのロンドン大学およびエグゼター大学のイスラーム研究機関をそれぞれ訪問し、世界的に活躍する研究者から自身の研究テーマに関する有益な意見を伺うことができた。また国内外で口頭発表を行い、それらのフィードバックをもとに分析を進めた最新の研究成果を論文発表することができた。具体的には、シャアラーニーの提起する理想の人間「完全人間」の議論を解析し、彼の完全人間論の理解が、従来イブン・アラビー学派の間で継承されてきたそれとどう異なるものであるかを明らかにした。また夏期に入手した写本をもとに、シャアラーニーの神学的見解についても考察を行った。これらはいずれも未研究の議論であり、シャアラーニーの思想的意義を把握する上でも、その重要性は極めて高いものであると言える。 ,
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は海外で文献および情報収集を行っただけでなく、国内外で複数の口頭発表を行い、また最新の研究結果を論文の形で発表することができた。この論文で扱ったテーマは未研究の研究内容であり、意義のある成果を残すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度に海外で入手した写本をもとにシャアラーニーの神学的見解についての考察を進め、それと近代のイスラーム改革主義思想との関連性を検討しつつ、オスマン朝における存在一性論学派の思想の包括的分析を試みる。その際新たに資料が必要な場合には、トルコのスレイマニエ図書館およびエジプトの国立図書館やアズハル大学図書館等を訪問し、文献収集を行う予定である。
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Research Products
(5 results)