2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04439
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
劉 文 京都大学, 大学院農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | セルラーゼ / 干潟セルロース分解 / セルロース吸着ドメイン / 体外分解 |
Research Abstract |
水生生のセルラーゼにおけるセルロース結合ドメインCBM)の能明について : 昨年度、CBM-GFP組換えタンパクを用いてセルロース繊維に対する吸着性を視覚的に証明することに初めて成功した。そこで今年度は、ヤマトシジミのセルラーゼCBMのセルロースに対する吸着能を反応速度論的に験討した。その結果、特に高い基質親和性を示すことがわかった。さらに、海水に相当する塩分濃度で行ったことから、ヤマトシジミのセルラーゼは自然界においても、体外に分泌されたあと、速やかに基質である植物残渣のセルロースを認職して速やかに結合するものと予想された。ヤマトシジミCBMはセルロース繊維に対しては非特異的に強い吸着性を示したが、ヨシの葉に対しては吸着しなかった。この結果は、ヤマトシジミのセルラーゼのCBMはヘミセルロースなどと複合体を構成した状態のセルロースに対しては吸着性を示さないことによるものと解釈された。櫨過食者であるヤマトシジミが体外に分泌するセルラーゼは、微生物酵素などによりある程度分解が進みセルロース繊維が露出したヨシなどの残渣のセルロースを分解し、その結果生じるオリゴ塘をヤマトシジミが取り込みことで、栄養源として利用している可能性が考えられた。 体外セルラーゼの分解能について : ヤマトシジミが体外に分泌したセルラーゼが実際にヨシの葉を分解することができるかどうかを検討する目的で、ヤマトシジミの飼育水にヨシの葉を浸演し、生じた還元糖とグルコース量を測定した。バクテリア由来の酵素活性を抑制するためアジ化ナトリウムを飼育水に添加した。その結果、飼育開始後半月にわたって経時的に還元糖の分解が認められた。還元糖のうち約1/3はグルコースであった。この結果から、ヤマトシジミから体外に分泌されたセルラーゼは、実際にヨシの葉のセルロースを分解し、自ら利用できる還元糖やグルコースを産生することが明らかとなった。 一方、ヤマトシジミの飼育水にグルコースを与えると、経時的に飼育水中のグルコースが減少したことから、ヤマトシジミはセルロースの分解の結果生じたグルコースを利用している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
汽水城の干潟などに生息するヤマトシジミは濾過食者であることから、すべての栄養源を水に懸濁した状態で摂取している。これまでこのような濾過食者が能動的に体外に酵素を分泌して、体外の有機物を分解していることは全く報告されていなかったが、私たちはヤマトシジミのセルラーゼのアミノ末端に存在するCBMと呼ばれるセルロース結合ドメインに注目し、本ドメインが極めて強いセルロース結合能を有することを証明することに世界で初めて成功した。また、CBMを介してセルロースに結合したヤマトシジミのセルラーゼが実際にセルロースを分解して低分子糖を生成すること、このようにして生じたグルコースがヤマトシジミに吸収されていることを、などを示唆する結果を得るごとにも成功した。これらの結果は、干潟生物の生態を理解するうえで新たな考え方を提示するものであり、干潟の保全や干潟機能の理解において極めて価値あるものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヤマトシジミはセルロースの分解の結果生じたグルコースを利用している可能性が示唆された。グルコースの吸収を直接証明するために、蛍光標識されたグルコース誘導体である2-NBDGを用いてエラでの吸収を調べたが、内因性の蛍光成分のため取り込みを証明するにはいたらなかった。今後は、安定同位体^<13>Cで標職されたグルコースを用いて検討したいと考えている。
|