2012 Fiscal Year Annual Research Report
三重項電荷分離の特性解明とスピン変換システムを有した多機能分子システムの構築
Project/Area Number |
12J04466
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
上友 淳弘 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013-03-31
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Keywords | 光電子移動 / 電荷分離状態 / ポルフィリン / スピン禁制 |
Research Abstract |
研究目的:光電子移動反応は人工光合成、太陽電池、光触媒などの光エネルギー変換システムへ応用できるためこれまでに多くの研究が行われてきたが、研究の大部分は一重項電荷分離状態に対して行われたものである。光電子移動反応の理解を深め、より発展させるためには三重項電荷分離状態の特性を理解する必要がある。そこで、本研究では一つの分子に対して、一重項、三重項電荷分離状態を生成させ、それぞれの性質を比較することで三重項状態の特性を解明することを目的としている。 研究実施計画:三重項励起状態を生成させるスピン増感部、電子ドナー、電子アクセプター部を連結させた三連結体の設計および合成を行い、過渡吸収スペクトルの測定により光物理過程を明らかにすることが本年度の実施計画である。 結果と考察:スピン増感部に白金ポルフィリン、電子ドナーに亜鉛ポルフィリン、電子アクセプターにジニトロベンゼンを用いた三連体の合成を行った。THF中での過渡吸収スペクトルの測定から、7白金ポルフィリンを光励起した場合1.2μsの寿命を持つ電荷分離状態を生成した。一方、亜鉛ポルフィリンを光励起した場合には7.2psの寿命を持つ電荷分離状態を生成する事を明らかにした。白金ポルフィリンを光励起した時に長寿命になった理由は三重項電荷分離状態の失活がスピン反転を伴うスピン禁制過程だからであり、この結果は励起光を制御することで各スピン状態を選択的に生成させる事が可能なことを示している。これらの研究成果は架橋部の長さや構造が与える電荷分離状態への影響を各スピン多重度について同一の電子ドナー・アクセプターから構成される分子で議論することを可能にする点で有意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン増感部、電子ドナー部、電子アクセプター部から構成される三連結体の合成、および過渡吸収スペクトルから目的とする電荷分離状態の生成を確認できたことかあおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電子ドナー、電子アクセプターを連結する架橋部の構造や長さを変化させることで架橋部の構造が与える各スピン状態の電荷分離状態への影響を解明する。さらに、今回構築した分子システムにアンテナ機能を持たせた多機能分子システムの構築を行う。
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Research Products
(1 results)