Research Abstract |
本研究の目的は,個別的社会関係資本と集合的社会関係資本の形成メカニズムを統合する理論モデルを構築することである.それに向けて,本年度の研究では,1社会調査の実施,2集団・組織尺度の再検討とレビュー,3社会調査の計画の練り直し,4新たな社会関係資本の形成の検討の4点を行った. 1質問紙調査の本調査に先立って,少数サンプルでの予備調査を実施し,その調査データの分析を行った.その結果,本研究の重要な独立変数である集団・組織の変数がまとまらず,尺度自体の妥当性に疑問が生じた.この尺度は,理論的概念から構成されたものであったが,従来因子分析などによって,下位因子が確認されてこなかった.そのため,尺度としての妥当性の点で問題が生じたと考えられる.このことは,予測不能の事態であったが,その問題点については,これまで指摘されていない,そのため,この点を再検討し,改善を図ることは,本研究のみならず当該分野においても必要不可欠な課題である. そこで,2を実施した.集団・組織研究では,組織文化に関して複数の尺度はあるものの,統計的解析などによって,下位尺度が確証されたものはほとんどない.そのため,経営組織論などの尺度を利用することを避け,社会心理学における集団・組織の尺度の利用することにした.この点を踏まえて,3の調査項目の練り直しを行った. また,既存の社会関係資本が新たなネットワーク形成にどのような影響を及ぼすのかについて,4を検討した。その結果,社会関係資本のタイプは,新たに形成された社会ネットワークのタイプに対応する一方で,社会関係資本の量は,社会ネットワーク形成の量と逆U字型の関係をもっていた.この点は,社会関係資本の形成には,閾値効果があり,さらに,人間のネットワーキングにおいて,最適な人数が存在することを示唆している.このように,本研究の理論的フレームワークの基盤をなす知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会調査の実施については,予想外の事態が生じた,しかしながら,本年度では,この課題に関わる問題点をすべて解決することができたため,次年度から問題なく調査実施に取り組めるようになった.また,社会関係資本と社会ネットワークの形成との関係について,非線形の関係が明らかになったため,その関係を考慮したより現実に近いモデルを構築することができる.
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