2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04521
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横井 佐織 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メダカ / 配偶者防衛行動 / 配偶者選択行動 / 神経ペプチド |
Research Abstract |
1.配偶者防衛行動に関与する神経ペプチドの探索とTilling法を用いた神経ペプチド関連変異体のスクリーニング配偶者防衛行動に関与する神経ペプチドとして、攻撃行動への関与が示唆されているソマトスタチンのアンタゴニストのインジェクションを行ったが、行動に変化はなかった。AVTが配偶者防衛行動に関与していることを修士課程で発見し、この関与を遺伝学的に示すために、変異体のスクリーニングを行った。具体的には、AVT,VstRla1, VstRla2(AVTの受容体),IST(オキシトシンの非哺乳類ホモログで、AVTと逆の働きを持つ)の4遺伝子に対し、スクリーニングを行った結果、それぞれの遺伝子において機能欠損を期待出来る変異体を2種ずつ得た。これらの個体は目的遺伝子以外にも変異を持っている可能性が高いため、現在バッククロスを行っている。 2.メダカオスにおける配偶者防衛行動と、メスにおける配偶者選択行動との関係性を検証 通常配偶行動が成立しない(メスはオスの求愛を朝方にしか受け入れない)時間帯である、夕方の時間帯においても配偶者防衛行動は朝方と同様に観察されることを見出し(修士課程)、この時間帯の配偶者防衛行動における優劣と、翌朝自らの子孫を残す確率との間に相関があることを示した。よって、メダカの配偶者防衛行動には他オスとメスとの交配を阻止する以外の効果があることが考えられた。 メダカのメスは「見知ったオス」と「見知らぬオス」と視覚識別して、前者を配偶相手として選択することが本研究室で示されている(Okuyama et al, preparation)。そこで、この配偶者選択行動に着目し、配偶者防衛行動との関係性の有無を明らかにするために、夕方の配偶者防衛行動で劣位オスであったオスのみが、メスから視認されるよう、2匹のオスを隔離し、翌朝3匹を同じ水槽にいれ、父親検定を行った。その結果、メスから視認されることで、劣位オス由来の受精卵の割合が有意に上昇した。よって、メダカにおける配偶者防衛行動には、メスに視認されることにより、翌朝のメスの性的受け入れを上昇させるという効果もあることが示唆された。この結果は、メダカのオスにおける配偶者防衛行動と、メスにおける配偶者選択行動とが共進化した可能性を示している。メスにとって、見知ったオスを配偶者として選択することは、配偶者防衛行動で優位、つまり優良な遺伝子を持ったオスと交配できるというメリットが考えられ、逆にオスにとっては、配偶行動時間帯ではなくとも配偶者防衛行動を行うことにより、翌朝メスに受け入れられやすくなるというメリットが考えられるのである。グッピーなどメスの配偶者選択行動がオスの形態を進化させた例は数多くあるが、このように性淘汰によって進化獲得されたと解釈できるオスの行動様式を研究室内で再現したのはほとんど例がない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経ペプチド配偶者防衛行動を含めた社会性行動に関与していることは、様々な動物種で研究されてきたが、モデル動物における研究は少ないため、これまでは薬理学的な解析にとどまっており、遺伝学的手法を用いた証明はほとんど行われていなかった。本年度、モデル動物であるメダカを用い、スクリーニングを行うことで、数種の遺伝子において変異体を獲得出来た。これらを用いることで、神経ペプチドが配偶者防衛行動に関与することを遺伝学的に証明できるとともに、トランスジェニック個体の作出にも利用出来る。また、配偶者防衛行動と配偶者選択行動との関係性はこれまで提唱されていなかった、行動の共進化の可能性を示唆し、大きな発見と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングした変異体にはバッククロスによるクリーニングが必要であるので、今後はバッククロスとジェノタイピングを行い、行動アッセイに用いる。そして、脳のどの領域が配偶者防衛行動に重要であるかの絞り込みを行うため、トランスジェニック個体の作出を進めていく予定である。具体的には、当初はHSPプロモーター下流でCreが発現する系統と、神経ペプチドプロモーター下流で「loxP-GFP-loxP-TeTx/CFP」が発現する系統との掛け合わせを予定していたが、掛け合わせには時間がかかり、手間もかかる。そこで、温度依存的に、可逆的に翻訳阻害を引き起こすRicinの利用がメダカで可能かどうかを検証中である。Ricinの利用が可能であれば、DNAコンストラクトの作成も、トランスジェニック個体の作出も容易になると考えられる。
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Research Products
(2 results)