2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04527
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
片渕 奈美香 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 天然染料 / 初期合成染料 / 染料部属 / 染色堅牢性 / 染織品 / 保存 / 古裂 |
Research Abstract |
本研究では、明治時代の着物地を対象として、色調(とくに赤と紫)の保持を目的に、染料を中心とする材質分析と保存に関わる染色堅牢性の評価を行う。試料には1年目に収集した着物地(古裂)を用いた。 1. 文献調査および主要な赤・紫系合成染料の選定・収集 先行研究と明治時代に発行された染色技術書等から、当時の染色技法や主要な赤・紫系合成染料について調査した。ここで選定した染料を、2.で行う合成染料の同定のための既知染料とした。 2. 染料を中心とした古裂の材質分析 1年目に作成した染料分析のためのフローチャートを展開して、古裂に用いられている合成染料の絞り込みや同定ができるかを検討した。同定には、フローチャートを構成する分析手法のひとつである、各種溶媒による抽出試験から得られる抽出液を利用した。古裂から得られた抽出液の紫外可視吸収スペクトルを測定し既知染料のものと複数の溶媒で照合した。赤地古裂では、既知染料と一致しなかったが、古裂のみを比較すると極めて形状の類似したスペクトルが得られた。紫地古裂では、1点が2種類の溶媒において既知染料と極大吸収値が一致した。複数の溶媒でスペクトルを比較することで合成染料の同定もしくはLある程度の絞り込みが可能であることがわかった。 3. 保存に関わる染色堅牢性の評価 色調の保持に関わる要因として重要な光の影響を評価するために、古裂の露光試験を実施した。古裂の変退色の評価には、L^*a^*b^*値とそれらの値を用いて算出される露光前後の色差(ΔE^*ab)を用いた。L^*a^*b^*値の計測は、分光測色計が一般的であるが、本研究で用いた複雑な多色模様を特徴とする古裂には適さないため、画像解析を応用した。露光試験に先立ち、古裂の変退色の評価に画像解析を用いる際の注意点として、①古裂の色の不均一性、②画像の解析範囲の設定に関わる精度、の2点を確認し、画像解析を用いる根拠を得た。現在、データの分析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1年目に作成した染料分析のためのフローチャートをさらに展開させ、初期合成染料の絞り込みや同定を試みた。また染色堅牢性の評価では、試料の特性を考慮して新しく取り入れた評価法について検討すると共に、露光試験を完了することができた。これらについては概ね計画通りに進んだと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、まず本年度に行った露光試験のデータを詳細に分析する。また、材質分析を含め本年度までに得られた結果を整理・分析し、必要に応じて追加調査及び追加実験を行う。これらをまとめたうえで、明治時代の着物地の色調(とくに赤と紫)を保持する上で注意すべき事項を整理する予定である。
|
Research Products
(3 results)