2012 Fiscal Year Annual Research Report
フラボノイド成分の蓄積機構を利用した柑橘類果皮の資源化
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12J04540
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 剛史 京都大学, 農学研究科, 学振特別研究員(DC2)
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Keywords | フラボノイド / ウンシュウミカン / ヘスペリジン / 顕微ラマン分光法 / イメージング質量分析 / 果皮 |
Research Abstract |
研究課題「フラボノイド成分の蓄積機構を利用した柑橘類果皮の資源化」の研究を、フラボノイド成分の蓄積機構の解明を目的として、今年度は果皮に蓄積する結晶成分の形態観察と直接的同定方法の確立及びフラボノイド成分の果皮組織内分布の可視化を試みた。 ウンシュウミカン果皮の各種顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた組織観察により、針状の結晶が集まり球状の形態をとる結晶状物質を確認した。この物質は顕微ラマン分光法により得られたラマンスペクトルにより、ヘスペリジン結晶であることを同定した。これまで同物質の形態観察の報告は行われていたが、その同定法は試料を粉砕・抽出したのちにHPLCにて分析する従来の同定法は結晶成分の間接的な証明でしかなかった。しかしながら、本研究は顕微ラマン分光法を用いることにより、組織上の結晶成分を直接的に同定することを可能にした点に意義があり、植物成分の同定における新たな視点をもたらす重要な知見を提示した。また、果皮切片組織におけるフラボノイド成分の分布を可視化するためにMALDIイメージング質量分析法を用いて実験を行ったところ、解像度と切片作成法に課題が見つかった。今後ヘスペリジンを始めとする含有フラボノイドの分布の明確なデータを得るために、更なる実験の繰り返しを要する。 本研究では、カンキツ果皮におけるフラボノイド蓄積の解明のため、成分の蓄積形態と分布の解析(上述の今年度の成果)と共に、細胞内局在の解明と成分生合成・分解における関連遺伝子の発現解析への取り組みを申請時に計画しており、その準備を進めてきている。最終年度となる二年目には計画された実験の実施と結果をより精力的に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の実験計画は大きく三つあり、各々が手法が全く異なる実験への試みである。特に初年度実施した一つ目の結晶性成分の形態観察、同定と分布には、顕微ラマン分光法とイメージング質量分析法という新規手法を用いる必要があり、条件検討等に想定以上の時間を要した点が理由として挙げられる。二つ目の成分の細胞内局在の解析、三つ目の成分の生合成・分解関連遺伝子の発現解析への取り組みは最終年度である二年目にそれぞれ実験を着実に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
一つ目に、果皮組織内での成分の分布での実験を予定していたイメージング質量分析法において十分な解像度が得られない点と、切片作成における課題が残されている。対応策としては、実験における対象とする種、成分の再検討と、技術指導を受講を考えている。二つ目に、計画されている細胞内局在の解析と関連遺伝子の遺伝子発現においては、実験系が互いに異なり時間的制約から両者の完遂が難しくなる可能性がある。対応策として、優先順位の再検討とサンプル提供機関への技術面、知識面での協力を仰ぐことを考えている。
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Research Products
(2 results)