2013 Fiscal Year Annual Research Report
フラボノイド成分の蓄積機構を利用した柑橘類果皮の資源化
Project/Area Number |
12J04540
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 剛史 京都大学, 農学研究科, 学振特別研究員(DC2)
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Keywords | ウンシュウミカン / フラボノイド結晶 / ヘスペリジン / 顕微ラマン分光法 / 走査型電子顕微鏡(SEM) |
Research Abstract |
本研究ではフラボノイド成分の蓄積機構の解明を目的として、今年度は、昨年度実施したウンシュウミカン果皮に蓄積するヘスペリジン結晶成分の形態観察(光学顕微鏡)と直接的同定(顕微ラマン分光法)に関して様々な側面から精査・考察しデータの有効性と有用性を検証した。 ウンシュウミカン果皮切片において観察された十数ミクロン程度のヘスペリジン結晶分布について、未成熟/成熟果実それぞれの果皮切片での比較を行った。その結果、既報のヘスペリジン定量分析の結果(未成熟果皮により多く、特にアルベドへの局在が顕著)とよく一致し、観測結果の信頼性を高めた。また結晶の性質を調べるために切片をDMSOで洗浄し、その前後の様子を観察した結果、切片上に多数確認されていた結晶は水での洗浄では変化が無かったが、DMSO洗浄によって切片中から完全に溶解した。この溶解性はヘスペリジンのものに一致した。最後に、顕微ラマン分光法において、結晶を構成するヘスペリジンとよく似た化学構造を持ち、ウンシュウミカン果皮においてヘスペリジンに次いで多く蓄積が確認されるナリルチンのラマンスペクトルを取得し、ヘスペリジン標準物質、切片中の結晶由来のスペクトルと比較した。その結果、結晶から得られたスペクトルの主要なピークは、ヘスペリジン標準物質のピークと1対1対応したのに対して、ナリルチンは812㎝^<-1>に特徴的なピークを有しており、逆にヘスペリジンと結晶物質に共通して検出された2つのピーク(それぞれ764/767と1607/1604㎝^<-1>)は確認されなかった。このことから顕微ラマン分光法によリヘスペリジンとナリルチンの区別化が可能であることを示した。 この結果は、フラボノイド結晶をサンプル粉末を抽出し分析する従来の手法に比べ、その局在の情報を失うことなくin situ同定を可能にした重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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