2013 Fiscal Year Annual Research Report
認知情報処理特性を生かした新しい防災教育法の提案と的確な災害対応能力の強化
Project/Area Number |
12J04610
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
行場 絵里奈 東北大学, 災害科学国際研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 防災教育 / 情報活用 / リスク認知 / 主観的評価 / 定性的表現 / 被災地内と被災地外 / 認識の違い / 認知と意欲の関係 |
Research Abstract |
防災意識向上のために必要な認知と意欲の側面に焦点を当て、概念、規則、技能の認知特性別に区分した防災教育用のテキストベース・映像ベ一ス双方に対するパフォーマンステストと動機付けアンケート調査を行うことによって、認知特性と意欲特性の相関性を検証する調査を実施した。その結果、学習コンテンツに対する意欲の強さが各認知特性を強化する内容によって異なることが明らかになった。さらに、テキストベースの教材については規則レベルの学習項目は「実行する必要がある」という意志や「これならできる」という自信に関する意欲が形成されやすいことが導き出され、映像ベースの教材については学習者の印象度を強める効果はあるものの、これらの意欲要因と理解度との相関は全般的に低いことから、防災に関連した学習項目に対する理解度を高めるためには、映像提示や動機づけのみならず、繰り返しによる振り返り学習や訓練等が重要であろうことが示唆された。次に、気象庁が新しく改訂した津波警報において数値ではなく、「巨大」「高い」などで津波の高さを表した定性的表現に対する各自の主観的な数値による想定、および全国斉一に発表される定性的表現による津波警報の主観的有効度を、仙台市内の大学に入学した学生を対象に調査した。その結果、東北地方太平洋沖地震発生当時(高校生のときに)、被災県(岩手県、宮城県、福島県)に居住していた学生群のほうが、それ以外の地域に居住していた学生群よりも、定性的表現に対してより津波の高さを高く想定する傾向があり、さらに改訂後の津波警報に対してより有効であるという回答が多いことが判明した。次に、被災地(宮城県)内の大学の学生と被災地外の大学の学生を対象として、同調査を行った結果、被災地外大学の学生の方が、「高い」「巨大」等の定性的表現に対して数値で想定する津波の高さを大きく見積もる傾向にあることがわかった。今後は調査範囲と対象者を、災害時における情報の効用性、防災意識の変化や的確な知識、行動能力を検証することによって基礎教育者の生徒や地域住民も対象とし、各年齢層での人間の認知心理やリスク意識に密着した有効な防災教育体系の効果的なあり方について研究することを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、防災教育教材の更なる分析と、2013年3月に改訂された津波警報における定性的な表現の有効度を検証することを目的としていた。前者については、Intemational Journal for Cross-Disciplinary Subjects Education V01,4 1ssue 1に採録され、後者についてはThe 9th APRU Research Symposium on Multi-Hazards around the Pacific Rimにて発表され、さらに本年6月に行われるED・MEDIA2014にても発表が決まっている。Journal of Disaster Researchにも津波警報に関する研究を論文にまとめたものを投稿済みで、審査の結果条件付き再録という結果を頂いたため、現在修正中で再度投稿する予定である。このため、このまま順調に研究を進めれば、さらなる成果が期待できると思える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査範囲と対象者を大学内のみに限定せず、幅広い年齢層、地域性、職業層に渡る対象者について、改訂された津波警報に対する主観的評価と情報に対する危機意識を調査する。得られた結果より、気象庁の情報発信意図と地域住民の情報理解の相違性を調査し、両者の隔たりを軽減する方法を考案するとともに、人間の情報認知に基づいた防災教育プログラムの設計指針を示す。さらに、知識(K)レベル、規則(R)レベル、スキル(S)レベルの3つの認知階層で区分されたRasmussenの人間の基本的な認知状態理論である認知情報処理階層モデルに基づいた誤り修正方法を実践・提案することも考えている。両方の調査とも災害(特に前者に関しては災害発生時の居場所)に、の居場所に関する内容が含まれており、さらに被災地域の住民など災害経験者も対象とするため、事前に調査の内容を十分に説明し、対象者のインフォームドコンセントを必ず得る。参加を拒否する権利を与え、その被験者にとって不快や精神的苦痛を感じるような内容であれば、いつでも調査を中断できる形式する。
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Research Products
(4 results)