2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規幹細胞マーカーSox9を指標とした消化器系幹細胞からの発癌機構の解析
Project/Area Number |
12J04612
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 秀基 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 発癌 / 幹細胞 / Sox9 / AID |
Research Abstract |
研究代表者は、慢性炎症に従ってActivation-induced cytidine deaminase(AID)が上皮細胞に異所性に発現し、その遺伝子変異導入活性を介して発癌につながることを提唱し、様々な消化器系臓器において数多くの報告を重ねてきた。また、最近Sox9発現細胞が、肝臓・膵臓・腸管の正常幹細胞/前駆細胞の特性を備えていることが明らかになってきた。今回、Sox9発現細胞にAIDを特異的に発現させることにより、消化器系臓器の組織幹細胞へのゲノム異常の蓄積が、癌の発生につながるかを検討することを目的として本研究を開始した。 1.Sox9-CreノックインマウスとAIDコンディショナルトランスジェニックマウスを交配、繁殖させることによりSox9-AIDマウスを22匹、コントロールマウス(Sox9-Creノックインマウス、AIDコンディショナルトランスジェニックマウス、wild-typeマウスを含む)を62匹作成した。Sox9-AIDの中で最長歳のマウスはまもなく50週齢を迎える段階であり、近日中に表現型の解析を開始し、さらに各腫瘍組織を用いた全ゲノム解析を施行する予定である。この結果により、Sox9を指標とした消化器系組織幹細胞からの発癌プロセスおよび、その間に蓄積する遺伝子変異の全体像を明らかにすることができる。 2.wild-typeマウスに0.03%TAAを8か月投与したところ、20匹中14匹に肝腫瘍の発生を認めた。これらの生じた肝腫瘍および非腫瘍部に対して、Sox9免疫染色も含めた病理組織学的検討を行った。その結果、腫瘍部では非腫瘍部と比べて、明らかにSox9の発現が増強していることが確認された。これは、肝幹細胞/前駆細胞は、肝障害時における肝再生だけでなく、肝発癌過程においても一定の役割を果たしていることを示唆する結果であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sox9-Creノックインマウスと、AIDコンディショナルノックアウトマウスとを交配させ、SoxO発現細胞に特異的にAIDを発現させるSox9-AIDマウスおよびコントロールマウスの作成は、当初の予定通り順調に進んでいる。これらのマウスの表現型の解析(肝臓・膵臓・腸管)結果が待たれるところである。また、チオアセトアミド(TAA)を用いた肝発癌モデルマウスにて、生じた肝腫瘍組織にSox9が発現していることも確認しており、これは肝発癌プロセスにおいて幹細胞/前駆細胞が果たす役割を示唆する結果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
Sox9-AIDマウスおよびコントロールマウスの表現型の解析を順次行っていく(肝臓・膵臓・腸管各臓器に対して、腫瘍の発生頻度やサイズ、免疫染色も含めた病理組織学的検討を行う。)。また、腫瘍組織及び非腫瘍部組織、さらにはコントロールマウスの該当する臓器の組織から抽出したDNAを用いて、次世代ゲノムアナライザーを活用した発癌過程での遺伝子変化の網羅的解析を施行する予定である。
|
Research Products
(5 results)