2013 Fiscal Year Annual Research Report
光応答性有機結晶の結晶成長制御による新規機能性材料の創生
Project/Area Number |
12J04639
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
北川 大地 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 結晶多形 / 相転移 / フォトメカニカル / 屈曲 / バイメタルモデル / ねじれ |
Research Abstract |
光応答性分子結晶の結晶成長を制御し、新たな機能性材料の創生を目指している。フォトクロミック化合物は、光照射により可逆的に異性化し、色だけでなく分子構造、屈折率、誘電率、酸化還元電位などの様々な化学的および物理的性質も可逆的に変化する。フォトクロミック化合物の中でもジアリールエテンは、高い熱安定性と繰り返し耐久性を有し、溶液中だけでなくアモルファス状態や結晶中でも光異性化が進行する。これまでに、ジアリールエテン結晶のアモルファス状態からの結晶化および結晶成長による表面粗さの変化を利用した表面濡れ性制御、紫外光照射による光異性化を用いたそれらのパターニングについて報告している(D. Kitagawa et al., Chem. Commun., 2010, 46, 3723 ; Chem. Sci., 2012, 3, 1445)。 本年度は、採用1年度目に新たに見出した反応部位にプロピル基を有するジアリールエテンの結晶多形と結晶多形間相転移および、採用2年度目の目標としているジアリールエテン結晶のフォトメカニカル効果について研究を行った。反応部位にプロピル基を有するジアリールエテン結晶における相転移挙動の詳細な考察から、その相転移は結晶の融解を伴わない結晶・結晶相転移であることを見出し、ドミノ式に相転移が起こっていることを明らかにした(D. Kitagawa et al., Chem. Asian. J., 2014, 9, 289)。フォトメカニカル効果については、光誘起屈曲現象における屈曲の初速度と結晶の厚み依存性が、Timoshenkoのバイメタルモデルを用いることで理論的に説明できることを明らかにした(D. Kitagawa et al., J. Phys. Chem. C, 2012, 3, 1445)。また、新しいフォトメカニカル効果として光誘起ねじれ現象を新たに発見し、ねじれ現象は結晶の厚み方向に対する反応の不均一性および結晶の斜め方向への収縮によって引き起こされていることを明らかにした(D. Kitagawa et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 9320)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度において研究計画にあげたジアリールエテン結晶のフォトメカニカル効果において、屈曲速度と結晶の厚み依存性を実験的に明らかにし、バイメタルモデルを用いた理論的側面からの議論に成功している。また、新しい光誘起結晶形状変化として光誘起ねじれ現象を見出している。これら研究成果を学術論文として発表し、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ジアリールエテンのフォトメカニカル効果において異なる結晶間での屈曲速度の定量的評価を目指し、研究を行っている。種々のジアリールエテン結晶の屈曲速度と結晶の厚み依存性、バイメタルモデルを用いたフィッティング、結晶中におけるジアリールエテン分子の配列、ジアリールエテン分子の反応性を詳細に検討する。また、フォトメカニカル効果を用いた応用研究への展開を試みる。
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