2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04647
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
呉 静 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 発茸ホルモン / LC-MS^2 / strophasterol / chanxine / キノコ |
Research Abstract |
キノコにおけるホルモンは明らかにされていない。キノコは胞子から菌糸、菌糸から子実体(キノコ)、子実体から胞子という生活環を持っている。本研究では、菌糸から子実体を発生させるホルモン(発茸ホルモン)の発見を目指し、以下のような実験を行った。 1ハタケシメジの栽培現場では、時折、異常な子実体が生じる。我々は、この異常生育は発茸ホルモンの過剰産生によるものと考えた。そこでハタケシメジの異常子実体を抽出物から、子実体形成誘導物質の精製、構造決定を試みた。その結果、抽出物のヘキサン可溶部から、4つの化合物(HTKS1-4と仮称)を単離し、現在、構造を解析中である。 2サケツバタケから新規物質strophasterol A-Dを単離した。これらの化合物は、これまでに全く報告の無い極めて新規性の高い骨格を持っていた。 3植物や動物にはステロイドホルモンが存在する。キノコは一般にステロイドを多く産生している。このことから、我々は、キノコにもステロイドホルモンが存在するという仮説をもっている。その候補として上記のstrophasterol類や以前当研究室で茶樹茸から単離されたchanxine A-Eを考えている。また、コムラサキシメジから得られた植物成長調節物質2-azahypoxanthine(AHX)、2-aza-8-oxohypoxanthine(AOH)およびimidazole-4-carboxamide(ICA)はキノコに共通に存在する可能性がある。さらに、上記のHTKS類も発茸ホルモンとして可能性があると予想した。 そこでこれらの化合物がキノコ中に共通に存在するか否かをLC-MS^2を用いて検討することにした。現在はこれら化合物の最適な検出方法を検討中である。また、ヤマブシタケやエノキタケ等を用いて、これらの化合物の菌糸成長、子実体形成に及ぼす影響を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子実体形成誘導あるいは促進活性物質の精製、構造決定を試みることを目的としたが、その候補として多くの化合物を得ることができた。さらに極めて構造新規性の高いstrophasterol類を発見するなど計画以上に進展した結果がある。キノコの各生育段階の抽出物のメタボローム・プロテオーム解析は進展がやや遅れているが、総体的におおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)平成24年度の研究を継続し、子実体形成物質を探索し、単離が成功した場合は、NMR等の各種機器分析により構造を決定する。 2)Strophasterol類、chaxine類、AHX、AOH、ICA、HTKS類がキノコ中に共通に存在するか否かをLC-MS^2を用いて検討することにした。 3)Strophasterol類、chaxine類、AHX、AOH、ICA、HTKS類あるいは今後得られる化合物を対象に子実体形成に対するバイオアッセイを行う。 以上の検討により、子実体形成機構の分子レベルでの解明を行う。
|
Research Products
(6 results)