2013 Fiscal Year Annual Research Report
国立国会図書館蔵特500資料群を中心とした戦前・戦中期検閲原本資料に関する研究
Project/Area Number |
12J04677
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
牧 義之 中京大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本近代文学 / 出版メディア / 検閲 / 言論統制 |
Research Abstract |
平成24年度において一応の調査が完了した特500資料群について、25年度は原本による詳細な調査(デジタル端末画面での判読な不可能な文字やスタンプなどの確認)を行なった。同じく平成24年度に着手した特501資料群については継続して調査を行い、こちらも一応の完了をみることができた。今後は、調査内容の分析・データ化と原本による追加調査を行う予定である。 平成25年度には、「『新刊弘報』から見る戦時下日本の出版メディア統制」(『出版流通メディア資料集成(二)―戦時日本出版配給機関誌編』第1巻、文圃文献類従32、金沢文圃閣、平成25年5月)と「萩原朔太郎『月に吠える』発行の経緯に関する考察――内閲、削除、作者の誤認」(『文学・語学』第206号、平成25年7月)の2本の研究論文を発表した。特に後者は、昨年11月に行われた「全国大学国語国文学会」第106回大会研究発表会における「萩原朔太郎『月に吠える』の削除に関する事情について――内閲がもたらした影響」を論文化したものである。本論文は、平成26年度中に刊行を予定している単著に1章分として収録する予定である。 平成25年5月18日には「出版法制史研究会」第8回例会において、「大正期「内閲」の運用期間とその事例についての考察」(大妻女子大学図書館棟5階会議室)の題目で口頭発表を行なった。本報告は、これまでその実態が未詳であった、大正時代における「内閲」(検閲に先立つ法外的な措置としての事前点検)について、具体的な事例や実態を示す資料を紹介し、実施された時期のおおよその特定と、廃止に至った原因について考究した。この成果は、刊行予定の単著で書き下ろしの2章分として収録する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた特501資料群のリスト化と調査の大半を終えることができた。また、調査結果を踏まえて検閲制度、内閲、伏字記号に関する研究を単著としてまとめる作業を並行して行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、調査が終了した特500・特501資料群に関して、調査結果の分析とデータ化の作業、及び追加調査を行ない、両資料群の性格と資料群から判明した検閲事務の実態解明についての報告を研究会などで行う予定である。 25年度には、戦前に内務省警保局図書課で検閲事務に携わっていた役人の日記を入手することができた。この日記に関しては、資料の紹介とともにその分析結果を研究会で発表する予定である。このように、先行研究に見落とされてきた未発見資料の発掘にも力を入れたいと考えている。
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