2012 Fiscal Year Annual Research Report
神聖ローマ帝国とスイスにおける日本の宗教政策の受けとめ方-「宗派化」に注目して-
Project/Area Number |
12J04698
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大場 はるか 京都大学, 人文研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近世史 / ドイツ:スイス:オーストリア / イエズス会 / 国際情報交換 / 演劇 / 宗派化 / キリシタン / オランダ東インド会社 |
Research Abstract |
カトリック擁護の立場からキリスト教弾圧へと変化した近世日本に関する情報が、当時のドイツ語圏において各地の宗派政策や身分制とどのように関係しながら広まったかを探求する目的で、研究者は2012年4月からオーストリアのウィーン大学において在外研究を遂行し、その一方で特別研究員奨励費に関する申請書に書いた通り、ドイツのミュンヘン(2012年8月)、ゴータ/エアフルト(同年9月)、オーストリアのグラーツ(同年12月)、スイスのチューリヒ/ルツェルン(2013年2/3月)において合計3ヶ月1週間の史料収集を行った。具体的には、日本関係の旅行記や地図に加え、東アジア関係の書籍や陶磁器の購入記録が掲載されている会計簿(ザクセン・ゴータ)、グラーツで上演された日本関係のイエズス会劇に関する史料、グラーツで印刷業を営みイエズス会を助けたヴィードマンシュテッター家に関する史料、日本を扱った各地のイエズス会劇のパンフレット約50部と脚本3部、チューリヒで1624年に公布された宗教改革派の演劇禁止条令、スイスのカトリ'ック勢力の中心地であるルツェルンのイエズス会に関する史料、1688年と1741年にルツェルンで上演された大友宗麟に関するイエズス会劇の史料、イエズス会の「上部ドイツ管区」に関する報告書などを収集した。スイスの文書館では写真撮影が許可されていたため、400枚程度の史料を写真の形で入手することができた。これらの史料収集は当時のヨーロッパが日本をどのように理解していたかを解明するためには非常に重要である。研究成果は、ウィーン大学とグラーツ大学のコロキウムで2012年11月末に発表した。また、2013年2月にオランダのアムステルダムで開催された演劇史の学会においても、日本を扱ったイエズス会劇に関する学会発表を行った。本年度は先行研究を網羅することと史料収集が一番の課題であったので、論文の形での研究発表は来年度以降に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
在外研究先のウィーンで自分のテーマと関係する数名の研究者に出会うことができ、有益な情報を複数得ることができたため。また、オランダのアムステルダムで開催された学会で、スイスの演劇・文学研究者数名と出会うことができ、彼らからも情報を得ることもできたため、スイスでの史料収集・調査が思った以上の成果をもたらした。
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Strategy for Future Research Activity |
スイスに関する史料が予定より大幅に多く得られたため、この部分の研究を計画よりも深めたい。グラ0ツに関しては来年度も史料収集を1週間予定していたが、本年度の調査で史料が十分に揃ったため、その必要がなくなった。また、ミュンヘンに関しても史料の一部がデジタル化されたため、来年度に予定している1ヶ月の研究滞在の必要が減り、1週間程度の滞在で十分になった。他方、オーストリアのインスブルック州立文書館に新たな史料があることが発覚したため、来年度はミュンヘンに加え、インスブルックで1週間の史料収集を行いたい。
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Research Products
(3 results)