2012 Fiscal Year Annual Research Report
二元論的/双対的な意味のモデル-包括的な論理観を目指して
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12J04708
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大西 琢朗 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 意味理論 / 照明論的意味論 / 双側面説 |
Research Abstract |
本研究の目的は,多様な論理の妥当性を統一的に説明しうるような「二元論的/双対的な意味のモデル」を「証明論的意味論」の立場から確立することである.平成24年度はその目的に照らして,(1)「形式的な意味論的枠組みの構築」,および(2)「従来の枠組みとの比較」に重点を置いて研究を行なった.研究の成果は下記学会において口頭発表し,京都大学の博士学位論文としてまとめた(2012年11月26日付).以下に具体的な研究内容について述べる. 「従来の枠組み」の代表例は,マイケル・ダメットの「意味の理論」にかんする議論である.かれによれば,論理的妥当性を説明することは,新しく知識を獲得することを可能にしたり,命題の主張・否認などの言語行為を制約したりという,われわれの言語実践のなかで論理的な推論が果たしている役割を説明することであり,数学的・形式的な意味論の哲学的な意義もこの観点から考察されねばならない.本研究では,この―最近の論争ではしばしば忘れられているようにみえる―ダメットの洞察を,かれの著作を詳細に吟味することで改めて確認するとともに,その洞察に基づいて構築されたかれの枠組みの問題点も指摘した.その問題点とは,かれの枠組みでは,推論の妥当性にとって決定的に重要な「真理」の概念がどうしても不明確なものになるということである.さらに本研究は,双側面説(bilateralism)と呼ばれる考え方に基づいた意味論的枠組みを提示し,そこでは上記の問題点が解決されるということ,また,この解決策はダメットの元々の洞察や問題意識に照らしても十分受容可能であるということを論じた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイケル・ダメットの枠組みをより啓発的な仕方で再評価することができ,またそれを踏まえた独自の枠組みの構築が進められたため.平成24年度に予定していた研究はほぼ達成できたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の成果を踏まえ,今後は双側面説に基づく枠組みの精緻化と拡張を図っていく.また,博士論文の書籍化を含め,研究成果の発表に積極的に取組む.
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