2012 Fiscal Year Annual Research Report
アントラセン環を有する金属架橋カプセルによるナノカーボンの新機能創出
Project/Area Number |
12J04743
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
貴志 礼文 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アントラセン / カプセル / チューブ / 自己組織化 / コラヌレン / フラーレン / ゲスト内包 |
Research Abstract |
本研究では、アントラセン環で囲まれたナノ空間を有する金属架橋カプセルにナノカーボンを内包することで、ホスト-ゲスト間の金属-πおよびπ-π相互作用を誘起させると共に、それらの包接錯体を精密配向させることで複合機能性材料の創製を目指した。我々は最近、アントラセン環を有する有機配位子とPdイオンとの自己組織化により、Pd架橋カプセルを構築し、その内部空間へのフラーレンC_<60>の定量的内包に成功した(N.Kishi, MYoshizawa et al., JACS, 2011, 133, 11438-11441)。そこで本年度は、Pd架橋カプセルによるC_<60>の部分骨格を有するナノカーボン類(コラヌレン)の内包および、新規Ag架橋チューブによるC_<60>やその誘導体の内包と放出を達成したので報告する。 Pd架橋カプセルのCD_30D/D_2O混合溶液にお椀型ゲストのコラヌレンを加え加熱撹拌することで、選択的に2分子のコラヌレンを包接したPd架橋カプセルを得た。この詳細な分子構造はNMR、ESI-TOF MSおよびX線結晶構造解析によって明らかにした。その結晶構造では2分子のコラヌレンはお椀を向かい合わせる様に内包されており、カプセルに内包されることで特異な配置を取ることが明らかとなった。 また、等構造の有機配位子と硝酸銀、フラーレンC_<60>の3成分をアセトニトリル中、遮光下で撹拌することにより、C_<60>を内包したAg架橋チューブを新規に合成した。その構造はNMR、ESI-TOF MSおよびUV-visによって確認した。また、チューブに内包されたC_<60>は可視光を照射することにより、定量的に放出されることがUV-visからわかった。さらに、チューブにはC_<60>誘導体(マロン酸ジエチル付加環化物、インデン付加体)も内包および放出可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果として、Pd架橋カプセルによるナノカーボン類の内包が挙げられる。カプセル内部には、フラーレンの部分構造であるコラヌレンが2分子、新規かつ特異な配置で包接されることを明らかにした。また、C_60や種々の置換基を有するC_60誘導体を内包可能な新規Ag架橋チューブの構築に成功した。コラヌレンに関する成果については既に論文掲載、チューブに関しても学会発表を行っていることから、進度はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、金属架橋チューブを用いて種々のサイズ(直径・長さ)のカーボンナノチューブの包接を検討し、その包接挙動を明らかにする。また、種々の金属イオン(Cu、Mn、Zn、Ru、ランタノイドなど)を利用した新規金属架橋カプセルの構築し、これらのフラーレン包接錯体を合成する。近接したホスト-ゲスト間での特異な金属-π、π-π相互作用の発現を目指す。また、新規金属架橋カプセルにいても金属内包フラーレンの内包に取り組む。金属架橋カプセルにはCu、Mn、Ruなどの遷移金属イオンの他に、発光性・磁性を有する希土類金属イオンを用いたカプセルを検討する。さらにそれらの精密配向による液晶化を目指す。
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