2013 Fiscal Year Annual Research Report
抑うつの昇華理論による理解とその心理臨床的治療の探究
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12J04776
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀川 聡司 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 昇華 / 抑うつ / 精神分析 / 羨望 / ドルト |
Research Abstract |
本研究の目的は、「抑うつ」という人間の心理状態に関して、今日注目されている「新型うつ」を考慮に入れた上で、一つの体系的な理解と、その治療法を提示することである。そしてその際、精神分析の概念である「昇華」を糸口として考察を進めていくのがその特徴である。本研究を進めることによって抑うつの根本的な構造が明らかになれば、有効な治療法が生み出されると同時に、抑うつの予防策を講じることもできる可能性が見込まれる。 本研究で取り組まねばならないことは要約すると以下の三つを挙げることができる。 ①昇華理論の探究 ②臨床実践における治療のメカニズムの明示 ③報告者の臨床実践に基づいた、本研究の理論的考察の妥当性の検討 本年度はとりわけ①を重点的に進めた。具体的には、昇華と羨望の防衛が根本的に異なるものであることを学会発表で示したのに加え、過去の有名症例の治療プロセスを考察した。 ②③に関しては、日々の臨床実践と定期的なスーパーヴィジョンに加え、ケース検討会への参加や事例論文の学会発表を積極的に行った。その他にも、抑うつに関する研究として、昨今話題になっている「新型うつ」をレビューし, それが身体性という次元からの治療が有効であることを示唆した。 本年度進めた研究によって、昇華という曖昧な概念の明確化が一歩前進し、うつの臨床的な問題をその本質から考えていくための足掛かりをもつことができたと言えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三年間にわたる研究計画の第2年目は、主に昇華概念の変遷をレビュー的に辿ることを目標としていたが、本年度はそれだけに留まらない、報告者独自の視点から問題点を掲げ、それを考察するという作業ができた。査読論文3本を含む5つの論文を公表できたことからや、3つの学会で口頭発表をしたことからも、おおむね順調に研究が進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後最も中心的に取り組まねばならない問題は昇華の臨床的な意義を主張するための理論的、実践的な研究である。その際キーワードとなるのは、「エディプス・コンプレックス」「倒錯」である。共に精神分析の主要概念であるが、報告者の見解によるとそれは昇華と密接に関連している。報告者の臨床体験をも踏まえつつ、その理解の深化を進めなくてはならない。
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Research Products
(8 results)