2013 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期の都市と異端-フリブールのヴァルド派をめぐって-
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12J04787
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神谷 貴子 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中世都市史 / スイス史 / 市民登録簿 / 未刊行史料 |
Research Abstract |
今年度の課題は、①フリブールの市民登録簿に関する史料論的考察、②市民登録簿IからIIへの移行の際に転記された部分についての考察であった。 ①史料論については、市民登録簿という史料類型の特徴、文書の作成と利用、その機能について考察を試み、「紙から羊皮紙へ―中世後期フリブールの市民登録簿に関する史料論的考察―」という題目で論文を執筆した。プリプールにおいては、神聖ローマ帝国の領域内で作成されたドイツ的な都市文書として位置づけられる市民登録簿に、フランス語圏に由来する公証人制度が融合し、正確で詳細な、スイスのドイツ語圏に類を見ない、より近代的な市民登録簿が生み出されたと結論づけた。 ②今年度は市民登録簿IIのフォリオ1から30までの考察を行った。この未刊行の史料を読解し、活字化するとともに情報のデータ化、分析を試みた。これまで、市民登録簿IIからIへの移行の際に、それまでの地区ごとの記録から年代順の記録方法への転換が行われたとされてきたが、申請者の調査によって、転記部分については都市の有力者からヒエラルキー順に記録されたことが明らかになった。この考察については、「Die Einführung des Zweiten Bürgerbuchs in Freiburg (1416) ; Die Analyse der Übertragungseinträge im Folio 1-30r.(フリブールにおける市民登録簿IIの導入―フォリオ1から30r.における転記記録の分析―)」という題目で論文を執筆した。この史料分析については、2014年5月31日~6月旧に立教大学で行われる第64回日本西洋史学会においてポスター発表を行う予定である。 8月初旬にはスイスのベルンとフリブールにおいて史料調査を行った。ベルンとフリプールの専門家の間で、上記の史料分析を報告し、この研究によって新たな知見が示されたと評価を得ることができた。 現在は、①②の論文を学術雑誌に投稿する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の課題に着実に取り組み、2本の論文にまとめることができた。この研究成果については、スイスの専門家の間で報告し、一定の評価を得ることができた。また、2014年5月に日本西洋史学会でも研究成果を発表する予定である。さらに今年度は、この研究成果を雑誌に投稿を積極的に行っていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後まず取り組むべき課題は、市民登録簿IIフォリオ30以降の史料の活字化と分析、市民に関する情報のデータ化を進めることである。さらに、市民登録簿の史料群や他の都市文書と照らし合わせて考察し、中世後期のフリブールにおける市民層とはいかなるものであったかを明らかにしたいと考えている。また、近隣都市ベルンの都市文書との比較も行うことによって、中世後期フリブールの都市社会をより明らかにしたい。
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Research Products
(1 results)