2012 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の表皮および鰓粘膜免疫系を介したワクチンデリバリーシステム構築に関する研究
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12J04812
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
加藤 豪司 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・病害防除部, 特別研究員(PD)
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Keywords | Vibrio anguillarum / 粘膜免疫 / 浸漬ワクチン / 炎症性サイトカイン / Flavobacterium psychrophilum / IL-1β / IL-6 / TNFα |
Research Abstract |
Vibrio anguillarumの不活化菌体は魚類の浸漬ワクチンとして使用できることから、体表および鯉などの粘膜組織から取り込まれると考えられている。そこで、本不活化菌体の取り込み経路およびその後の粘膜免疫応答について解析することを目的に研究を行った。浸漬ワクチン処理を行ったヒラメの鯉、皮膚および腸管を採取して免疫染色法により菌体を染色したところ、皮膚および腸管では組織表面に付着したV. anguillarumの不活化菌体が観察されたのに対し、鯉では上皮組織中に菌体が観察された。さらに、浸漬ワクチン処理後に各組織の炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6およびTNFα)の遺伝子発現変動を解析したところ、皮膚、腸管および腎臓では大きな変動はみられなかったが、鯉では統計的に有意な発現上昇が観察された。以上のことから、V. anguillarum不活化菌体は浸漬投与により鯉から取り込まれ、炎症応答などの免疫応答を誘導することが示唆された。 V. anguillarum不活化菌体が粘膜組織から取り込まれることが明らかとなったため、これを利用したワクチンデリバリーシステムの構築を目的として実験を行った。V. anguillarumに他種細菌の抗原遺伝子を導入しワクチン株とするために、菌体表面に導入した抗原を発現させるプラスミドP298WOを構築し、エレクトロポレーション法により本菌を形質転換する実験系を確立した。また、アユ養殖で問題とされている魚病細菌Flavobacterium psychrophilumの新規抗原タンパク質の探索を行い、感染防御抗原として有望な23種類の膜貫通型または分泌型の抗原タンパク質を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Vibrio anguillarumの組換え菌株作製については、平成24年度に予定した発現系の構築を済ませたことに加え、Flavobacterium_psychrophilumの抗原タンパク質を新たに同定することがでた。また、粘膜組織によるワクチンの取り込み機構および粘膜免疫応答に関しても一定の結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に同定した23種の抗原タンパク質を導入したV. anguillarumワクチン株を作製し、これを浸漬ワクチンとして利用することでF. psychrophilumに対する感染防御効果が得られるか検討する。また、本ワクチンにより誘導される免疫応答を解析するために血中抗体価および粘液中抗体価を測定する。さらに、ワクチン処理魚をF. psychrophilumで攻撃し、粘膜組織および体組織における免疫関連遺伝子の発現動態について解析する。
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Research Products
(3 results)