2013 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の表皮および鰓粘膜免疫系を介したワクチンデリバリーシステム構築に関する研究
Project/Area Number |
12J04812
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
加藤 豪司 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所病害防除部, 特別研究員(PD)
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Keywords | Vibrio anguillarum / 粘膜免疫 / 浸漬ワクチン / Flavobacterium psychrophilum / 免疫グロブリン / IgT / IgM / IgD |
Research Abstract |
鰓粘膜免疫系を介したワクチンデリバリーシステムにおいてワクチンの運び屋となるVibrio anguillarumに導入する抗原として、昨年度中に、魚類の病原体であるFlavobacterium psychrophilumの抗原タンパク質69種類を同定した。しかし、抗原候補の数が非常に多く、この中から特に効果的なものを選抜する必要があった。そこで, 69種類の抗原候補から膜結合性および分泌性のタンパク質を23種類選抜した。これら23種類について組換えタンパク質を作製してアユに接種し、F. psychrophilumによる感染実験を行った。その結果、3種類の抗原タンパク質(HCD、atpDおよびgdhA)がワクチン抗原として有効であることが示された。 V. anguillarum不活化菌体の浸漬投与により抗体の産生が誘導されることを昨年度の研究で明らかにした。そこで、抗原特異抗体がF. psychrophilum感染に対して感染防御効果を有するか検討した。F. psychrophilumに対する抗血清を本菌に感染したアユから採取して他の個体に移入し、受動免疫試験を行った。移入免疫を受けた個体は本菌による感染試験において抵抗性を示した。F. psychrophilum感染症を本ワクチンデリバリーシステムにより予防できる可能性が示された。 魚類の抗体として、三つの免疫グロブリンアイソタイプIgM、IgTおよびIgDが報告されている。そこで、本ワクチンデリバリーシステムにより誘導される抗体のアイソタイプについて検討した。アユではIgMのみすでに報告されていたため、本研究では、まずアユのIgTおよびIgD遺伝子をクローン化した。アユにV. anguillarum不活化菌体を浸漬投与し、鰓および腎臓におけるこれら遺伝子の発現動態を解析した。その結果、浸漬投与によりIgMおよびIgTの遺伝子発現量が有意に増加することが示された。このことから、本ワクチンデリバリーシステムによりIgMおよびIgTが誘導されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、同定した抗原69種類を搭載した組換えV. anguillarum株を作製する予定であったが、抗原候補の数が非常に多かったため、搭載抗原の選抜を行った。そのため、今年度行う予定であった本ワクチンデリバリーシステムの有効性評価は次年度に繰り越しとなった。しかし、当初の予定ではワクチンの有効性評価は次年度の課題であること、および本ワクチンにより誘導される免疫応答の解析は計画以上に進展しているため、自己評価は「②おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度同定した3種類のF. psychrophilum抗原を搭載した組換えV. anguillarum株を作製して本ワクチンデリバリーシステムの有効性評価を行う。また、本ワクチンデリバリーシステムにより誘導される免疫応答は、抗体産生を中心とした液性免疫応答であることが示唆された。この免疫応答を詳細に解析するためにはIgMおよびIgT二種類の免疫グロブリンアイソタイプを区別して検出する必要がある。これまで使用してきたアユおよびヒラメではこれらを検出するモノクローナル抗体(mAb)は樹立されていない。そこで、次年度はこれらに対するmAbが樹立されているニジマスを対象魚種として用い、本ワクチンデリバリーシステムの有効性評価を行う。
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Research Products
(8 results)