2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04868
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 博文 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会的ニッチ構築 / 適応 / 文化的信念 / ゲーム理論 / 相互協調性 |
Research Abstract |
本申請研究を通じて申請者は丁社会・文化的な生態環境(社会的ニッチ)への適応の道具としての心の性質が,適応すべき社会的ニッチそのものを生み出すという「社会的ニッチ構築」の観点から,文化的信念やそうした信念に従う行動そのものにより,人々が適応すべきニッチが生成され維持される過程の分析を進めてきた。初年度である平成24年度には,この分析を進めるためのいくつかの個別研究を実施し,得られた研究知見を国内外の学会で公表するとともに,その成果については国際誌へと積極的に投稿している。 平成24年度に実施した個別研究の一つに,日本人の集団主義的な信念とアメリカ人の個人主義的な信念に焦点を合わせた日米比較研究がある。この研究の目的は,集団主義的ないし個人主義的なニッチへの適応の道具として機能すると考えられる信念体系を具体的に示すことにあった。この研究を通じて申請者は,日本人の間ではまわりの人たちから嫌われないようにする(悪評を回避する)ことが賢いという信念を,一方でアメリカ人の間では自分を予測可能にする(シグナルとして機能する)自己表現を行うことが賢いという信念をそれぞれ強く有していることを示す知見を得ている。さらに,この研究を通して申請者は,「日本人は和を尊び,まわりの人たちと協調することを好む」,「アメリカ人は個人主義的で自分の利益を優先する」というような,従来考えられてきたような常識的理解が誤りである可能性を示唆する結果を得ており,その意味においてこの研究成果は,従来の心理学,とくに文化心理学の分野に対して,重要なインプリケーションを有するものと考えている。文化的信念の内容を具体的につきつめていくことと同時に,そうした信念の自己維持的な過程についても分析を進めていくことが次年度以降の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的をかなえるための複数の個別研究を計画どおりに実施しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、国内外における研究協力者との緊密な連携体制のもとで、本申請研究をさらに進めていく必要がある。申請者は2013年1月から3月にかけて米国メリーランド大学に滞在し、平成25年度以降の研究の準備を進めてきている。すでに準備を進めてきている個別研究はもちろんのこと、今後いくつかの研究計画を立案し、それらを実行に移していく必要がある。
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Research Products
(8 results)