2013 Fiscal Year Annual Research Report
中世イベリア半島における融和と軋轢-諸宗教・諸社会間における「辺境」比較史-
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12J04886
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
黒田 祐我 上智大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヨーロッパ中世史 / スペイン / イスラーム史 / 地中海 / フロンティア / アンダルシーア / 異教徒間交渉 |
Research Abstract |
本研究は、昨年度に引き続いて、自身の博士論文が対象としていた中世後期のカスティーリャ王国とナスル朝グラナダ王国との異教徒間関係の交渉史を土台として、更に大きな枠組み、すなわち西地中海海域史という研究領域を設定することを目指した。また、これまで二者択一的に把握されがちであった「戦争と平和」の実態の分析を目的とし、具体的に以下の三点に分けて遂行された。 1. 十字軍と「レコンキスタ」―「境域」における対異教徒認識の実態― イベリア半島は周知のとおり、ラテン的キリスト教世界(西欧世界)とイスラーム世界の接点であるが、本年は、中世の西欧世界を席巻した十字軍運動と、イベリア半島固有の「レコンキスタ」との比較を実施した。どちらの運動もイスラームに対する戦争行為であったという点で共通しており、事実、「レコンキスタ」は十字軍思想の影響を色濃く受けながら進展していった。しかし「レコンキスタ」におけるムスリム認識は、その「境域」的な地政学的状況を反映する形で、きわめて現実的なものであった。 2. カスティーリャ=グラナダ「境域」の戦争と平和―都市議事録史料を用いたミクロな交渉の分析― 博士論文の主題をさらに深化させるために、本年度は都市ヘレス・デ・ラ・フロンテーラの古文書館調査を集中的に実施した。この結果、15世紀の同都市議事録の存在を特定できた。次年度はこの分析を継続する予定である。 3. ひとつの政治文化圏としての西地中海圏 本年度は、イベリア半島を中心として、政治的な合従連衡を繰り返した西地中海圏(南仏、イタリア、マグリブ)という研究上の枠組みの策定のための予備的考察を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、中世西欧世界の枠内でのイベリア半島の「辺境」あるいは「境域」としての独自性を明らかにでき、またよりミクロな「辺境」社会の実像に迫るための手がかりを発見することが出来た。しかし、イスラーム世界(マグリブ)における「辺境」の実態については、予備的考察を除いて、着手することがかなわなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度では、まずこれまでの「辺境比較史」研究の成果を、日本の学会での報告を通じて公表することを計画している(次年度前半)。これを土台として、論文を複数提示することを目指す(次年度後半)。またこれと並行して、本年度に実施したヘレス・デ・ラ・フロンテーラ古文書館での調査を継続することで、次年度以降の研究に生かしていく。イスラーム史研究者とのさらなる対話を通じて、マグリブ・アンダルスにおける史料状況、研究状況の把握に努めるとともに、この成果を自身の研究に反映させていく。
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Research Products
(3 results)