2012 Fiscal Year Annual Research Report
フラビンを基本骨格とする光学活性高分子の合成とキラル材料への応用
Project/Area Number |
12J04919
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩花 宗一郎 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リボフラビン / 光学活性高分子 / 不斉酸化 / 高分子触媒 / キラル |
Research Abstract |
光学活性な天然物であるリボフラビンは、蛍光や酸化還元能などの様々な特長を有するものの、リボフラビン由来の機能性材料の開発はほとんど試みられていなかった。これまでに申請者は、リボフラビン部位を主鎖に有する高分子(poly-1)の合成に初めて成功し、poly-1が一方向巻きにねじれたらせん状会合体を形成することを明らかにしている。また、poly-1は過酸化水素存在下、スルフィドの不斉酸化触媒として作用し、対応する単量体のモデル化合物(model-1)よりも高い不斉選択性を示すことを見出している。この反応の酸化活性種は、poly-1およびmodel-1のフラビン環の4a位にヒドロペルオキシ基が付加した構造であると考えられるが、4a位の絶対配置が反転した2種類のジアステレオマーが生じる可能性がある。この活性種のジアステレオマー過剰率(de)と絶対配置を明らかにすることは、poly-1が形成する光学活性な会合体の構造や不斉反応のメカニズムを解明する上で極めて重要であり、本研究では不安定な活性種のモデル化合物として、4a位にヒドロキシ基が付加した類縁体(poly-10Hおよびmodel-10H)を合成し、そのdeと絶対配置の決定を行った。model-1およびpoly-1のCD_3CN溶液にMe_4N^+OH^-を加えることで調製したヒドロキシ付加体の^1HNMRスペクトルから、poly-10Hはmodel-10Hよりも高いdeを示すことが明らかとなった。これは、poly-1の光学活性な会合構造により、酸化活性種がジアステレオ選択的に生成し、スルフィドの酸化がより高い不斉選択性で進行したことを示している。また、時間依存密度汎関数法(TD-DFT)により、4a位の絶対配置が不明であったmodel-10Hの円二色性(CD)スペクトルのシミュレーションを行い、実測されたスペクトルとの比較から4a位の不斉炭素の絶対配置を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リボフラビン部位を主鎖に有する光学活性高分子を触媒として用いたスルフィドの不斉酸化反応に関して詳細な検討を行い、不斉選択性が単量体を用いた場合よりも向上する機構を明らかとした。 また、この成果を学術論文として発表した。さらに、時間依存密度汎関数法により、絶対配置が不明であったリボフラビン誘導体の不斉炭素の絶対配置の決定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
リボフラビン部位を主鎖に有する光学活性高分子を光学分割材料へと応用し、その分割能の評価を行う。 また、リボフラビンを用いた新規なキラル材料の開発を目的として、リボフラビン部位を側鎖に導入したペリレンビスイミド誘導体を合成し、その会合体の構造やキラル光学特性について詳細な検討を行うとともに、誘起された超分子らせんキラリティーを活用したキラルセンシング材料や不斉触媒への応用を行う。
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Research Products
(3 results)