2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04932
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高志 緑 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宋元仏画 / 水陸画 / 水陸会 / 金光明懺法 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、現存する水陸画の詳細な観察や文献資料の精読を通して、南宋時代の水陸画のあり方や、法会の細部をも復元的に考察し、その成果を刊行論文に発表することができた。これにより、文献資料に乏しく実態のよく分からなかった南宋時代の水陸会に対する理解も深めることができ、また有力な士大夫による宗教活動の一側面が明らかになったことは意義がある。また、神仏習合研究会や東洋文化研究所のシンポジウムなどに出席して隣接分野の研究者と交流を深め、研究に関する情報交換を行った。平成25年度の研究としては、水陸画の中に見られる諸天の図に注目し、水陸会と似通った性格を持ち、同時代同地域で隆盛した金光明懺法の諸天像について、国内外に伝わる諸天象や関連文献と比較検討し、考察を行った。金光明懺法の勤修や諸天像の安置、懸用は日本でも行われている。特に江戸時代(17世紀後半~18世紀初頭頃)に描かれた泉涌寺所蔵の金光明懺法に使用された諸天像の成立に関しては、中世以来の諸天像をもとに、江戸時代初期の黄檗僧独湛により制作された諸天像を参考に改変が加えられている可能性が考えられる。これにっいては、美術史学会の例会にて口頭発表を行った。同発表では、泉涌寺の諸天像について、現行の配置が「金光明懺法補助儀」を撰した北宋の慈雲遵式への回帰演想定されること、近世初期に渡来した黄檗僧独湛により制作された天部を群像で表す作品二点と関わりのある可能性を指摘した。なお、独湛の関与した2作品は平成26年秋に浜松市博物館で開催される展覧会で取り上げられる予定であり、展覧会の準備に関わらせていただくことになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果をまとめた論文を発表し、隣接領域の研究者の方々との交流を深められたことは評価できる。この論文により、南宋時代の水陸画及び水陸会を現時点の可能な範囲で復元的に考えることができたため、本研究の目的の半分はおおむね達成されたといえる。諸天像に関する考察も一定の成果を得ることができ、学会発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の対象は、宋元時代の水陸系絵画であるが、元代以降の成立と見られる作品が近年相次いで発見されており、現在進行形で研究対象が増えつつある状況にある。それらを概観し比較研究を進める上で、必ずしも研究環境が整っているとは言えない。また、中国の経済状況安定に伴い、未紹介の作品の図版集や研究書の出版が目下増加しており、それらの最新の研究成果をチェックし消化することに追われていては、申請者自身の研究にそれらを盛り込み、最終年度内に総括することが困難であると予想される。なお、諸天像については他の研究者もすでに研究を進めており、申請者の学会発表と同時期に論文が刊行されたため、今後の方向性を調整する必要がある。したがって、元時代については無理に踏み込まず、申請書の計画で掲げた以外の作品にも目を向け、他の儀礼美術との比較や宮延で行われていた仏教や道教の儀礼などとの関わりから、南宋時代の水陸系絵画の特徴を復元的に研究していきたい。
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Research Products
(2 results)