2012 Fiscal Year Annual Research Report
「亡命知識人」の見た戦後ドイツとその視点に関する史的研究(1943年~50年)
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12J04939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 健雄 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 亡命者 / 戦後ドイツ構想 / OSS / R&A / 抵抗 / ナチズム理解 / ドイツの民主主義的復興 / 戦後占領ドイツ |
Research Abstract |
私の今年度の研究の骨子は以下の2点にまとめられる。 (1)フランツ・ノイマンを代表とするアメリカに亡命したドイツ系社会科学者、人文学者たちが戦時中に所属していたアメリカ情報機関OSS(Office of Strategic Services)の調査・分析部門(ResearchandAnalysisBrance、以下R&A)においておこなったドイツ分析は如何なるものであったのかを明らかにし、その意義を評価した。 (2)戦後ドイツにおいて「再移民」(Remigranten、ないしは「帰還者」(Ruckkehrer)と称される、かつてドイツから亡命者し、戦後自発意思のもとドイツに帰国した人々が、戦後ドイツ復興にどのような関与をおこなったのか、またその関与にはどのような形態があったのかを明らかにし、それが戦後ドイツ社会における「他者」の包摂・排除過程と如何様な関係にあったのかを考察した 上記2点に対して私は、以下の方法でアプローチをおこなった。 (1)に関して:国立国会図書館にてOSS及びR&A関連史料の再蒐集をおこない、その分析をおこなった。また合わせて、戦中のアメリカにおけるドイツ分析の研究、ドイツ占領史、ファシズム・全体主義論の歴史、この3点を中心に先行研究を再度読み込みなおした。 (2)に関して:まずドイツ語圏で出版された先行研究の読み込みに時間を割いた。具体的にはドイツ系亡命者に関するハンドブック及び、『亡命雑誌』(Exilforschung)に収められた数多くの学術論文、そしてドイツ人亡命史家であるマリタ・クラウス氏による著作物などである。合わせて、ドイツに戻ったかつての亡命者であるフリッツ・エーベルハルト(Fritz Eberhard 1896-1982)に焦点を絞り、彼が亡命時に構想していた戦後ドイツ像と、戦後ドイツにおける実際の営為との解明をすべくその下準備を行った。 残念ながら、この2点の研究に関してその成果を平成24年度中に論文として発表することは出来なかった。しかしながら、ともに次年度の活字化に向けて重要な成果が上がった。活字化の目処は立っており、目下その作業に取り組んでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った研究がもつ意味として、研究全体を構成する個別研究対象を精査し、個々の研究の基礎資料を集めるというものがあった。この点に関して私は十分な成果を上げたといってよい。基礎資料の収集のみならず、個々の研究の学術的考察においても次年度以降に繋がる大きな成果があった。ただ、他方で、昨年度行った研究発表が学会報告1本のみということを勘案したとき、自己評価は穏当なものとならざるを得ない。今年度の成果は次年度中に発表される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
目下進行中の研究プロジェクトに関して、平成25年度中の論文化を行う。また並行し、戦後ドイツにおいて亡命者がどのように捉えられ、表象されたのかについて、研究を進める。本研究が亡命者側からみた戦後ドイツ像を解明することを主眼にする以上、その客体であるドイツ側からみた亡命者の姿の把握は欠かすことの出来ない作業であるといえる。博士論文執筆の際に言及すべき一つの前提条件が、この研究によって提示されるであろう。同研究に関しては、今年度中の学会報告及び研究ノートとしてまとめることを予定している。
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Research Products
(1 results)