2013 Fiscal Year Annual Research Report
「亡命知識人」の見た戦後ドイツとその視点に関する史的研究(1943年~50年)
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12J04939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 健雄 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ドイツ系亡命者 / 戦後ドイツの復興 / 亡命社会主義者 / 国際社会主義闘争同盟(ISK) / 亡命からの帰還 / 対独プロパガンダ / ゴーデスベルク綱領 / 戦略情報局(OSS) |
Research Abstract |
今年度は昨年度の後半に引き続いて、ドイツからの亡命政治家であり、戦後アメリカ軍占領下ドイツ・シュトゥットガルトへと「帰還」したブリッツ・エーバーハルトに焦点をあて、ドイツ系亡命者がみたナチス体制下ドイッと彼らの戦後ドイツ構想、そして戦後ドイツ復興への実際的関与の一端をそれぞれ明らかにした。具体的な研究内容は以下の2点にまとめられる。 1)エーバーハルトの戦後ドイツ、ラジオ放送復興への関与に関しての研究 1933年から1937年に至るまで社会主義者団体であった国際社会主義闘争同盟(ISK)の国内抵抗運動の指導者として活動し、その後イギリスへと亡命したエーバーハルトは、イギリス滞在中BBCの対独プロパガンダ放送に関与する。彼の亡命経験が、戦後ドイツへの帰還後如何に影響を与えたのか、その概要を明らかにすることで、戦後ドイツ復興においてかつての亡命者たちが果たした役割について考察した。亡命者たちの戦後ドイツ再建に対する貢献という側面は従来見過ごされてきた視点であり、ドイツ史における1945年を挟んだ連続性・非連続性の議論に、本研究は新たな視角を提示するものであった。 2)30年代から40年代にかけての、エーバーハルトの思想に関する研究の準備作業 彼が所属した国際社会主義闘争同盟に関する研究において従来強調されてきたのは、代表ヴィリー・アイヒラーの思想がもった重要性であり、戦後ゴーデスベルク綱領制定においてアイヒラーが果たした理念面での貢献であった。本研究では、エーバーハルトに着目することで、戦後SPDが国民政党化してゆく理念的基盤がイギリス亡命中社会主義者らの間で広く共有されていった過程を明らかにしようとする。その準備作業として、国際社会主義闘争同盟が1920年代から1945年にかけて発行した定期刊行物を調査、蒐集した。一部デジタル化されて公開されているものもあるものの、多くは日本国内に現存せず、今後の日本ドイツ史及びドイツ系亡命者史研究の貴重な一次史料となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
邦語による先行研究の極めて少ない分野であり、研究内容の論文化にはとまどっているものの、順調に外国語先行研究及び一次史料は集まってきており、またその読み込みも進んでいる。今年度の研究報告をもとにして、次年度には少なくとも1本の研究ノートと2本の論文が上梓される予定であり、史学研究としてはおおむね順調な研究進捗の度合いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当該研究助成金の最終年度にあたるため、先述「研究実績の概要」中2)の研究を継続させることに加えて、これまでの研究成果の論文化に専念する予定である。具体的には、ドイツ系亡命者たちちと戦後ドイツの関係性を巡る問題群に関して、史学史的整理を試み、それを研究ノートとして公表するとともに、先述「概要」中1)、2)の研究に関して、その成果を論文として公開する。これら論文化の作業と並行して、亡命者らによるドイツ分析及び戦後ドイツ構想の全体像の解明と、その中でこれまで研究対象としてきた個人、団体が占めた位置に関しての考察をすすめる予定である。
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Research Products
(3 results)