2012 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経回路における機能単位の発生的基盤:二光子励起法と分子遺伝学による研究
Project/Area Number |
12J04982
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 鉄平 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大脳皮質 / 発達 / 視覚 / 二光子顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究の目的は、発生学的に規定される局所神経回路の機能的性質を調べることにより、大脳皮質神経回路の"機能単位"の由来を明らかにすることである。大脳皮質の発生過程においては、単一の神経幹細胞から生み出される子孫神経細胞が、層構造に対して垂直方向に分布する(Sister Cells)。このような皮質に垂直な構造はHubel&Wieselらにより報告されてきた機能カラムとの関連を予想させる。最近、この予想を裏付ける証拠として、成熟した大脳皮質において、SisterCellsが特異的に結合した神経回路を作ることが分かった(Yu et al.2009)。 一方、マウス一次視覚野において、機能的に類似した神経細胞同士が特異的に結合した subnetworkを構成することも分かっており(Koetal.2011)、両者に密接な関係があることが期待される。しかしながら、実際にSister Cellsが機能的に類似した神経細胞から成る機能単位を構成するのか、という肝心な点については未だ分かっていない。そこで本研究では、(1)分子遺伝学的に標識した単一神経幹細胞由来のSister Cellsを、二光子励起法によるin vivoイメージングを用いて解析し、それらが機能的に類似した細胞から構成されているかを明らかにする。更に、(2)これらの神経細胞の可塑的な機能変化を複数日に渡って追跡し、Sister Cellsが類似した可塑的変化を示すような"可塑性の単位"としても動作しているのかを明らかにする。 本年度は、受入研究室における研究の結果、Sister cellsが比較的類似した方位選択性を持つことが論文として報告された(Ohtsuki et al.2012)。現在、このような機能的類似性が、発達期においてどのように変化しているかを解析している。並行して、長期的な活動観察のためのカルシウム指示タンパクを視覚野の神経細胞に遺伝子導入する実験を行った。この結果、細胞体だけでなく、軸索や樹状突起における活動も当初の予想より容易に観察可能なことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
sister cellsが類似した機能的性質を持つことが既に示された。この結果、当初は2年目から開始を予定していた、カルシウム指示タンパクを用いた長期的な活動観察を予定より早く始めることが出来た。また、この結果、軸索や樹状突起などの活動観察が可能なことが判明し、当初の予想よりも更に幅広く研究が展開する可能性が伺えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、sister cellsの機能的類似性が発達期においてどのように変化するかを調べる。また、安定した長期観察が出来る実験系の構築を行う。その後、環境の変化が神経細胞活動、特にsistercellsの機能的類似性に与える影響を調べる。更に、軸索や樹状突起のイメージングを応用し、sister cellsへの入力と、その出力との関係を調べる。
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Research Products
(3 results)