2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学シミュレーションを基にした反応経路探索と金属酵素化学への応用
Project/Area Number |
12J04986
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西本 佳央 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 密度汎関数強結合法 / フラグメント分子軌道法 / 計算化学 / 反応経路探索 / 分子動力学 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、分子構造や電子状態に着目して遷移金属錯体を含む物質の性質や、金属酵素が関係する生化学反応機構を、量子化学・計算化学の理論を基にした手法を用いて解明することである。金属酵素は生体で起こる多くの生化学反応に関与しており、その反応機構を解明することは、その生物に関する性質の理解にとても重要と考えられる。 金属酵素のような大きな系に関する計算は、その計算コストが問題になる。そこで、大規模な系に適用することができる計算手法を開発するというねらいを持って、最初に理論面を構築した。北浦教授らによって提案されたフラグメント分子軌道法と、密度汎関数強結合法とを組み合わせることにより、計算の精度を犠牲にせずに大きな系にも適用できる手法の提案をした。フリーのGAMESSパッケージに密度汎関数強結合法を組み込むことにより、効率よくフラグメント分子軌道法を用いた計算ができるようになった。従来から用いられてきたハートリー・フォック法や密度汎関数法と、フラグメント分子軌道法を組み合わせた場合に生じる誤差と同程度であることを確認することができ、これは今回提案した手法も十分に実用化できる可能性があることを示唆している。 また、反応経路探索の第一歩として、ロジウム錯体を用いた反応機構に関する研究を行った。この触媒反応は、活性化しづらいシアノ基を室温かつ温和な条件で反応を進行させることができるということがわかっている。この触媒反応の理解は、新規触媒の設計や、類似した触媒反応のさらなる理解に重要であると考えている。これまでに反応経路をいくつか提案し、学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
密度汎関数強結合法とフラグメント分子軌道法とを組み合わせるプログラムを組み上げることは、本研究課題で最も時間がかかる部分と考えていた。不完全ではあるものの、核となる部分は完成したため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度から組み上げてきたプログラムを実用化できるようにする。本研究課題では、並列計算の効率を上げることが非常に重要である。ディスクやノード間のアクセスをできるだけ減らすことにより、実用的なプログラムができると考えている。 同時に、今年度から行ってきた反応経路探索についても、さらなる検討を重ねると同時に、類似の触媒反応に関しても検討していくつもりである。また、反応経路探索に用いるための分子動力学シミュレーションとの結びつきについても、考慮していく予定である。
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Research Products
(3 results)