2012 Fiscal Year Annual Research Report
一方向配向カーボンナノチューブ含有複合材料の力学特性・破壊機構評価とそのモデル化
Project/Area Number |
12J05047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津田 皓正 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 複合材料 / 力学特性 / 数値解析 |
Research Abstract |
一方向配向カーポンナノチューブ(CNT)シートを用いて、ホットメルト法により樹脂をCNT間に含浸させることによって、CNTが配向した複合材料を製作した。製作した複合材料は、厚み方向に樹脂がほぼ均一に行きわたっており、良好な成型性が確認できた。また、複合材料の力学特性は引張試験によって得られ、その特性は従来の分散型CNT含有複合材料より高い弾性率・強度を示した。また、熱重量分析を用いてCNTの体積含有率を測定した結果、従来のCNT含有複合材料よりも高い体積含有率を有する複合材料が製作可能であることがわかった。 また、引張過程における複合材料内部の損傷進展過程を、収束イオンビームおよび透過型電子顕微鏡を用いて定量的に評価する手法を新たに提案した。その結果、樹脂とCNTの界面における損傷や、CNT自体の内部破断が応力の増加に伴って増加し、それらは複合材料の最終破断時に急激に進行することが実験的に示された。 最後に、数値解析モデルを用いて、本複合材料の損傷進展に関するシミュレーションを行った。その結果、本研究で用いたCNTにおいては、樹脂とCNTの界面における剥離・すべりによる損傷進展よりも、CNTの内部破断箇所からのマトリックスクラックの急激な進行による損傷進展のほうが複合材料の破壊進展に支配的であり、また、その応力伝達は樹脂とCNTの界面を通じて行われることから、CNTと樹脂間の界面接着特性よりも、CNTの弾性率や強度を上昇させることが本複合材料の力学特性の更なる向上に不可欠であることが示された。このシミュレーション結果は、本複合材料の力学特性強化および破壊進展特性をある程度合理的に説明可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、複合材料の力学特性・破壊進展特性を実験的に取得する方法を提案し、それを実証することと,数値解析モデルを製作し、そのモデルが本複合材料の力学特性強化メカニズムを説明可能なものであるかどうかについて、基礎的な検証を行うことが主な目的であった。実際に複合材料の製作および力学特性の取得、破壊進展特性の取得に成功し、また、数値解析モデルによる損傷プロセスの進行は、実験結果をある程度妥当に説明可能なものであることから、本年度における研究進行状況およびその目的の達成度については、おおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、CNTと樹脂間の界面剥離・すべりに加え、CNTの各層間における剥離・すべりも考慮に入れた数値解析モデルを用いた計算を行い、数値シミュレーション結果の妥当性・実験結果の再現性について、さらに詳細な検討を行う。 また、複合材料中におけるCNTの配向の乱れ・うねりが弾性率に及ぼす影響について考察を行う必要があることが判明したため、これらを考慮した計算を行うことによってその妥当性の検証を行う。'続いて熱処理などを行うことによってCNTの純度を向上させ、それが力学特性に及ぼす影響についても検討を行う。最後に、これらの結果および本年度の研究結果から、本複合材料の力学特性強化のメカニズムを、ミクロ・マクロ特性と関連付けて解明する。
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Research Products
(3 results)