2012 Fiscal Year Annual Research Report
光機能性分子の電子・スピンダイナミクスを記述する非経験的実時間シミュレーション法
Project/Area Number |
12J05074
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
赤間 知子 上智大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | RT-TDHF/TDDFT / GUHF法 / 光誘起電子・スピンダイナミクス / スピントロニクス / スピン軌道相互作用 / 実空間発展法 |
Research Abstract |
分子系における光誘起電子・スピンダイナミクスは高効率デバイス開発に応用できる可能性があるが、その詳細なメカニズムは未解明である。本研究では、スピンを含めた電子-核ダイナミクスの非経験的理論計算手法を開発し、光誘起機能性分子において電子・スピンダイナミクスが生じるメカニズムの解明に取り組むことを目的としている。この目的のため、今年度は、以下の2つの研究に取り組んだ。 1.実時間発展形式の時間依存Hartree-Fock(RT-TDHF)法及び時間依存密度汎関数理論(RT-TDDFT)は電子ダイナミクスを記述できる手法である。本研究では、電子だけでなくスピンダイナミクスの記述も可能にするために、RT-TDHF法を、スピンの向きも記述できる一般化非制限Hartree-Fock(GUHF)法に拡張したRT-TDGUHF法を開発する。今年度は、まずRT-TDGUHF法の表式の導出を行い、RT-TDHF法と同様の形式で記述可能なことがわかった。量子化学計算パッケージGAMESSを基にGUHF法の計算プログラムを作成し、正常に動作することを確認した。さらに、スピントロニクスで重要となるスピン軌道カップリングを考慮するプログラムの作成にも着手した。 2.RT-TDHF/TDDFT計算では系の大きさが大きくなると計算コストが急激に増加するため、計算コスト削減の取り組みを行う必要がある。これまで核波束の高速な時間発展法として南部研究室で開発されてきた実空間発展法は、時間発展における1ステップの計算時間を短縮でき、ステップ数も減らせる手法である。この実空間発展法をRT-TDHF/TDDFTに適用し、表式の導出を行った。今後プログラムを実装し、精度と計算コストの検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画では主に、RT-TDGUHF法の開発と、RTTDHF/TDDFTと半古典分子動力学を組み合わせた電子-核ダイナミクス手法の開発を予定していた。前者については順調に進展しており、後者については現在取り組んでいるところで次年度も引き続き行う予定である。また、新たに、実空間発展法の適用による計算コスト削減のための研究を行った。以上の理由からおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究に基づいて、スピン軌道カップリングを考慮するプログラムを完成させ、RT-TDGUHF法を用いた電子・スピンダイナミクスやスピントロニクスの記述を可能にする。反応経路の分岐や非断熱遷移を考慮するために、RTTDHF/TDDFTと半古典分子動力学を組み合わせた電子一核ダイナミクス手法の開発にも現在取り組んでおり、今後も研究を進める。また、分割統治法や高速多重極展開法等の高速化法を適用し、さらなる計算コスト削減を図る。開発した手法を光機能性分子に応用し、短時間フーリエ変換や多次元分光等の解析手法を用いて、電子・スピンダイナミクスのメカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(3 results)