2013 Fiscal Year Annual Research Report
光機能性分子の電子・スピンダイナミクスを記述する非経験的実時間シミュレーション法
Project/Area Number |
12J05074
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
赤間 知子 上智大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 光誘起電子・スピンタイナミクス / RT-TDHF/TDDFT / 効率的時間発展法 / 3項間漸化式 |
Research Abstract |
分子系における光誘起電子・スピンダイナミクスは高効率デバイス開発に応用できる可能性があるが、その詳細なメカニズムは未解明である。本研究では、スピンを含めた電子-核ダイナミクスの非経験的理論計算手法を開発し、光誘起機能性分子において電子・スピンダイナミクスが生じるメカニズムの解明に取り組むことを目的としている。 この目的のため今年度は、昨年度に引き続き、スピンダイナミクスを記述する手法や電子-核ダイナミクス手法の開発とともに、漸化式に基づく効率的な時間発展法を開発する研究に取り組んだ。特に、漸化式に基づく効率的な時間発展法の開発では、大きな成果が得られた。まず、昨年度に導出した時間依存Hartree-Fock (TDHF)/時間依存Ko㎞-Sham (TDKS)方程式に対する3項間漸化式の表式に基づいて、量子化学計算パッケージGAMESSをベースに、プログラムを実装した。TDHF/TDKS方程式における演算子はエルミート演算子であるが、密度行列の運動方程式の場合には反エルミート演算子になる。そこで、今年度は反エルミート演算子を含む時間依存方程式について、新たに3項間漸化式を導出した。これを実時間発展時間依存Hartree-Fock法/時間依存密度汎関数理論に適用し、上記と同様にプログラムに実装した。実装したプログラムを用いて計算を行い、従来の時間発展法である4次のRunge-Kutta法と比較して、パフォーマンスを検証した。時間刻みやステップ数等の条件を同じにした場合、4次のRunge-Kutta法に比べて計算コストを約四分の一まで削減できることがわかった。また、本手法では電子数の誤差が非常に小さいことも明らかにした。時間刻みを大きくした場合でも4次のRunge-Kutta法より高精度な計算が可能であり、さらなる高速化が見込まれる。このように、大幅な高速化が可能な効率的時間発展法の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光誘起電子・スピンダイナミクスのメカニズム解明のために、計算コスト削減は必要不可欠である。今年度は漸化式に基づく効率的時間発展法を開発し、電子ダイナミクスを記述する実時間発展時間依存Hartree-Fock (RT-TDHF)計算の大幅な高速化に成功した。この手法は、RT-TDHFだけでなく一般的な時間依存方程式に適用可能で、様々な手法に応用できる有用な方法である。以上の理由からおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度開発した漸化式に基づく効率的時間発展法は、光誘起電子・スピンダイナミクスのメカニズム解明やスピントロニクス現象への応用にとって、有用な手法であると期待される。このため、申請時の研究計画を変更し、今後はこの手法の理論的拡張・プログラム整備を優先して行う。また、これまでの研究に基づいて、スピンダイナミクスを記述する手法や電子-核ダイナミクス手法の開発も引き続き行う。必要に応じて分割統治法等の高速化手法や様々な解析手法も適用し、光誘起電子・スピンダイナミクスのメカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(5 results)