2012 Fiscal Year Annual Research Report
ホソヘリカメムシにおける生体リズムと闘争行動の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
12J05168
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
洲崎 雄 岡山大学, 大学院・環境生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホソヘリカメムシ / 繁殖行動 / オス間競争 / 配偶者選択 / 概日リズム / 時計遺伝子 / 直接的利益 / 間接的利益 |
Research Abstract |
花の開花や動物の交尾など多くの生物の繁殖行動は、時計遺伝子によって生じた概日リズムによる時間制御を受けている。交尾を行うタイミングが慨日リズムに支配されていることが、いくつかの研究で示されているが、交尾に付随して起こるその他の繁殖行動と概日リズムの関係を調べた研究例はない。そこで、本研究では、繁殖行動の慨日変化が報告されており、時計遺伝子に対するRNA干渉の効果が確認されているホソヘリカメムシRiptortus pedestrisを用いて、慨日リズムがオス間闘争に与える影響を調査する。当年度では、アクトグラフ装置を用いて概日リズムの周期が短い個体と長い個体を選抜した系統を作出し、概日リズムに対する選抜が闘争行動のエスカレーションにどのような影響を与えるか、また、逆に闘争に勝った個体と負けた個体の日周的な繁殖行動がどのように変化するかを調べる調べる予定であったが、選抜を行うにあたって、幼虫時の死亡率が高かったため、系統の確立および実験を行うことができなかった。そこで、概日リズム選抜をかけていない個体を用いて、闘争行動の日周変化を調べた。その結果、本種の闘争行動のエスカレーションは、どの時間帯でも変わらなかったが、それにも関わらず、オス間闘争は明期後半の中盤に最もよく観察された。したがって、本種のオスの攻撃行動は、概日リズムの影響を受けていることが示唆された。 また、本種の性選択について、闘争行動以外にほとんど知見がないため、本種の配偶者選択についても実験を実施した。メスの配偶者選択で支持される形質と、配偶者選択によってメスがどのような利益やコストを受けているかを調査した結果、オスの闘争能力と求愛能力は負の相関を示した。そして、メスはオスの闘争能力ではなく、求愛能力で配偶相手を選択していることが分かった。また、魅力が高いオスと交尾したメスは、寿命や産卵数の増加などの直接的利益を得ていなかった。一方、半きょうだい解析の結果、オスの魅力は息子に遺伝するという間接的利益があることが判明した。したがって、本種のオス間競争とメスの配偶者選択の選択圧は、拮抗的な関係にあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
系統の確立に失敗したこともあり、闘争行動の概日リズムに関する研究が若干遅れてしまったため、本年度中に論文として成果を発表することができなかった。しかし、本種の配偶者選択についても明らかにすることができたのは大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた、闘争の概日リズムに関する研究を論文化し、国際誌に投稿することを目指す。また、本種の求愛行動についても、概日リズムの有無を調べる。さらに、RNA干渉法を用いて時計遺伝子をノックダウンした個体を作出し、闘争行動や求愛行動等の繁殖行動のリズムが失われるかどうかを調べる予定である。
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Research Products
(4 results)