2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05186
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
桐田 敬介 上智大学, 総合人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 造形遊び / 図画工作料 / 教科教育学 / 質的研究 |
Research Abstract |
本年度の研究課題である、【造形遊びの事例報告における実践の意味と関心の分析】について。造形遊びの制度化される背景となった、元文部省教科調査官である西野などの理論的言説と現場教師たちの実践事例報告の双方を検討した結果、①造形遊びという教科内容が「教師が児童に特定の芸術様式(領域)の技法を教え込む」という「作品主義」(一般教育学での用語で言う、いわゆる「注入主義」)を回避するために構想・実施されていることが指摘された。そして、この指摘の背景には、西野らの美術教育的な洞察、すなわち②図画工作科という教科内容は厳密には制度的な概念としてのみ存在するものであり、児童自身は「造形遊び」も「絵や立体に表わす活動」も「鑑賞」も一体となっている『造形的な活動』そのものを経験しているということについての洞察が存在していることが指摘された。 しかしながら、西野らも実践報告を行なっている現場教師たちも、この「表現と鑑賞が一体となった造形活動」について厳密に理論化してはおらず、「造形遊び」と「作品主義」の違いを理念的に指摘するまでに留まっていた。よって、本年度では、まず「表現と鑑賞を一体とする造形活動」を包括的に理論化することを試みた。次に、上記理論を援用した実践研究として、東京都内某小学校に勤務する図画工作専科教師の授業に関する質的研究を試みた。具体的には、造形遊びの特質が、その都度の手持ちの材料との関わり合いから、材料の本来の用途とは異なる用途へ「転用」する仕方を発想し表現していく操作にあるという仮説を検証することを目的とした単一事例研究を行なった。 結果、児童は自身の持ち寄った材料や、用意されている材料をその都度転用していく過程が観察された。さらに、児童はその材料に埋め込まれている自身の「記憶」(材料を取りまく社会文化的コンテクスト)をも編み変えて、表現を展開していることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究課題である、造形遊びを実施する実践知の分析と継承にとって核となる、造形遊びを含めた造形活動のプロセスにおいて発揮されている資質・能力の包括的な理論研究と実践研究とを、昨年度に引き続き本年度において十全に果たし得たと考えられるためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これらの研究成果をもとに、造形遊びにおいて発揮されている資質・能力を踏まえ、造形遊びの十全な実施を可能にする熟達した教師を育てる教師教育の方法論としてのワークショップの開発の予備研究を行なっていく予定である。
|
Research Products
(10 results)