2013 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児の感情理解/表現への早期発達支援-神経・知覚基盤の可塑性
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12J05197
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松田 壮一郎 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害(ASD) / 早期発見 / 早期発達支援 / 視線運動 / 近赤外線分光法(NIRS) / アイトラッキング / 社会性 / 顔・表情認知 |
Research Abstract |
1. 発達検査と脳機能・視線評価 : 前年度に引き続き, K式発達検査による全般的な発達評価や, PVT-Rによる語彙評価, CARSによる虐閉症重症度評価を参加児に対して行った。支援により外側頭溝の活性化及び, 目領域への注視時間の増加が示されたか, 分析を行った。(1)「既知人物 : 参加児の母親」と「未知人物 : 参加児以外の母親」の表情動画を観察している際の眼球運動, 及び脳機能を支援前/後で比較した。これにより, 外側頭溝の活性化は認められなかったが, 2名の参加児について, 目領域への注視時間の増加が認められたことを示した。(2)研究内容を発展させ, Center for Autism ResearchのDr. McCleelyとの共同研究を開始させ, 笑顔の報酬価を眼球運動によって測定する研究手法の開発に着手した。 2. 支援指導の継続 : 前年度に引き続き, 顔・表情への注目, 及び感情表現について支援指導を行った。(1)発達年齢4歳の自閉症スペクトラム障害児において, 自然な遊び場面におけるアイコンタクトの形成や, 感情表現の支援を実施することにより, アイコンタクト及び, 笑顔表出の生起頻度を増加できることを示した。(2)研究結果を発展させ, 病院小児科と連携し, 病院内での支援プログラム運用を開始した。その結果, 病院内での支援により, 4歳自閉症スペクトラム障害児の感情理解/表現が促進できたことを示した。 3. 2~3歳児対象コンピュータ支援プログラムの開発 : 前年度の支援・評価結果を受け, Visual Basicを用いたコンピュータ評価・支援教材を完成させた。コンピュータ教材内には, 「①表情の弁別」「②表情の概念化」「③表情の言語化」「④表情と音声の対応」「⑤表情と文脈との対応」「⑥表情の動きの理解」などの, 段階的・包括的な評価・支援課題がソフトウェア上に実装された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書記載の「研究の目的」に対応し, 以下3点の理由から, おおむね順調に進展していると評価した。1. 神経・知覚基盤の評価を継続して実施したと共に, 支援により脳機能・視線が変化するかについての研究成果を示した点。2. 就学前~就学期間の参加児を対象として文脈と表情の対応関係の獲得について研究成果を示した点。3. コンピュータ教材を完成させた点。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題の今後の推進方策として, 以下の3点が挙げられる。1. これまで行ってきた感情理解/表現を更に発展させ, 特に「感情の表現」についての支援へ焦点をあてていく。特に, 自然な遊び場面での笑顔表出を増やす取り組みを行っていく。2. また, 表情の報酬機能が支援前・後でどのように変化するかを, 眼球運動によって調べる研究手法を完成させ, 自閉症スペクトラム障害児へ適用する。特に笑顔がどのような報酬として機能するかを明らかにしていく。3. これまでの研究成果を更にパッケージ化していき, 臨床現場での応用を通じて, 実践的な成果をあげていく。これまでに開発したコンピュータ支援教材を臨床現場で運用した際の, 支援効果を明らかにし, その結果を受けて更に教材の開発・修正を行っていく。
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Research Products
(8 results)