2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05235
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
熊崎 亘平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙磁場 / 宇宙マイクロ波背景放射 |
Research Abstract |
1年目の計画は、宇宙マイクロ波背景放射温度ゆらぎの方向依存性を調べる研究を完成させること、及び電波干渉計による偏波観測を用いた宇宙磁場断層解析法の理解であった。 宇宙マイクロ波背景放射温度ゆらぎ方向依存性の研究については、既存の衛星観測WMAPの7年目のデータを用いた解析を行い、銀河面に対して南西方向に特徴的なシグナルが見られることを発見した。このシグナルは十分な統計的優位性、さらに新規性もある非常に興味深い発見であった。この結果は査読付き論文雑誌Physical Review Dへ投稿し、今年度中に受理された。また、中国・北京で行われた国際的な宇宙論会議などにおいて、この結果の発表、議論を行った。これは申請書類に書いた年次計画通り順調に進んでいる。さらに2013年4月現1在、WMAP 9年目のデータに加え、新たな衛生観測Planckのデータも公開された。これらのデータについても同様の解析を行い、他の独立な観測においても特徴的なシグナルが見えるかどうかを確認するなど、次に繋がる研究になった。 宇宙磁場構造断層解析法についても、計画通りかそれ以上に進んでいる。この方法を提起した論文の理解、さらに初めて実用化した論文の理解を進めた。これらについては数学的・物理的双方からの理解が済んでいる。 さらに磁場構造断層解析法の理解が計画以上に進んだため、磁場構造断層解析法のコード化とそのコードを用いた単純モデルでのシミュレーションを行った。磁場構造断層解析法は銀河や系外銀河の磁場構造の探査にはよく使われているが、銀河間磁場構造の探査には未だ応用されていない。そのため、応用の可能性を探るために、実在の大型電波干渉計、さらに将来的に計画されている超大型電波干渉計を想定したシミュレーションも行った。 シミュレーションにより擬似観測を行い、磁場構造断層解析法の応用可能性を探った。この研究によって、次世代超大型干渉電波望遠鏡群SKAで得た偏波観測データに対し磁場構造断層解析法を用いた場合、銀河間磁場のRotation Measureが10rad/m^2程度あれば、十分見積もりが可能であることが明らかになった。この結果についても論文にまとめ、Astrophysical Journalへ投稿済みである。また、このシミュレーション結果を国内で行われた複数の研究会議において発表を行い、有意義な議論を行った。 以上のように、1年目の研究は当初の計画どおりかそれ以上に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標は大きく分けて2つあった。WMAP衛星による観測データの解析(A)と、宇宙磁場構造断層解析法の理解(B)である。(A)研究については、計画通り順調にすすみ、解析結果から新規性・統計的優位性をもつ新しい構造を発見することができたため、当初の計画通りに研究が遂行できたと判断した。またB研究については、方法論の提起論文、実用化論文を熟読し、深い理解を得ることができた。さらに、宇宙磁場構造断層解析法のコード化も実現し、大型電波干渉計を想定した擬似観測を行うまでに至った。ここまで進展したことを鑑み、(B)研究については、当初の計画以上の進展がみられたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究進展が計画より早く進んだことにより、2年目、3年目の研究計画を前倒しで行うことにする。つまり、より現実的なモデルを用いたシミュレーションデータによる擬似観測の今年度中の実施を目指す。このシミュレーションは自身で成したものではないため、海外に滞在する共同研究者に協力を仰ぐことになるが普段より密な連携をとっているため、大きな障害にはないと思われる。また、大きな目標として、現在計画中である観測計画のパイプラインへの関与も目指す。
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Research Products
(5 results)