2013 Fiscal Year Annual Research Report
野生哺乳類の季節性毛色変化と生物時計の適応進化に関する分子集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
12J05241
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木下 豪太 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニホンノウサギ / 毛色多型 / 系統地理 / 自然選択 / 適応進化 / 季節適応 |
Research Abstract |
冷温帯性の生物にとって、四季に応じた環境適応をすることは存続に関わる最重要課題である。 本研究でノウサギ属における冬季毛色多型の遺伝的基盤を解明するため、2つの毛色関連遺伝子MclrとAsipに着目し塩基配列の解読を行い、他の中立とされる複数の核遺伝子との比較解析を行った。 その結果、ノウサギ属の冬季毛色の多型にリンクした責任変異を見つけることはできなかったが、マンシュウノウサギの黒色型に対応する非同義置換がAsipのエクソン2上にあることを発見した。また、2つの毛色関連遺伝子は系統解析では種ごとに独自のクレードが形成された一方で、中立の核遺伝子を用いた解析では、大陸の複数種間でイントログレッションの傾向が見られ、古くから頻繁に種間交雑が起きていることが示唆された。また、ニホンノウサギの冬季白化型と非白化型の間でも遺伝子流動の制限は確認されなかった。このことから毛色多型を掌る毛色関連遺伝子には種独自の自然選択が働いている可能性が考えられる。 また、黒色型マンシュウノウサギの分布する沿海州には、キタナキウサギも黒色型が生息している。その毛色関連遺伝子を解析したところ、こちらはMc1r上の非同義置換が原因変異となっていることが示唆された。 沿海州におけるノウサギとナキウサギの黒色型はそれぞれ独自の突然変異により、非常に類似した形態多型が獲得されていることが明らかとなった非常に興味深い発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
詳細な集団遺伝解析により、ニホンノウサギの毛色多型の間では遺伝子流動の制限がないことを示唆することができた。また、ニホンノウサギの毛色多型を示す地域に自ら赴き、一ヶ月に及ぶ採集活動を行い、50個体ほどの試料収集に成功した。これを用いることで毛色多型に関与する特定の遺伝子の探索が大きく前進すると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年からニホンノウサギを飼育している富山市ファミリーパークとの研究協力を進めている。飼育している白化個体、非白化個体から換毛期に体毛採取を行い、RNA発現解析の材料確保を行った。また、過去の飼育記録から、白化型と非白化型の仔は、非白化型となる傾向が示されている。候補となる毛色関連遺伝子の遺伝様式を累代飼育されている個体の毛色型と家系図を照らし合わせることで、冬季毛色多型にリンクした遺伝子の特定を試みる計画である。また、毛色多型が混生する信越地域で新たに収集されたサンプルを活用し、毛色関連遺伝子を含む複数の遺伝子領域を解析することで、当地域におけるノウサギ集団の地理的遺伝分化と、地域性に依存せず毛色型にのみ対応する候補遣伝子の選出を行う予定である。
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Research Products
(1 results)