2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05242
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石野 誠也 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 順序 / セル・アセンブリ / 海馬 / 前頭連合野 / シータ波 / ラット |
Research Abstract |
本研究の目的は、セル・アセンブリ仮説に基づき、順序情報が表現される神経メカニズムを実験的に明らかにすることである。この目的のため、独自に開発した行動課題である順序情報課題を実行中のラットの海馬と前頭連合野から多数ニューロンのスパイク活動とより広い範囲(0.5-3.0m)のニューロン集団の活動を反映するローカル・フィールド・ポテンシャル(LFP)と呼ばれる局所的な電気活動を同時に記録し、ニューロン同士の同期活動とそれらニューロンが参加する集合的な電気活動の関係を解析することで、順序情報を表現するセル・アセンブリの実態を検出することを目指した。特定の2通りの刺激系列を10試行ずつ繰り返し行わせたとき,海馬のニューロンは系列選択的に活動を持続させた。この結果は,海馬のニューロンが各系列を1つの文脈として表象することを示唆するものである。また、これら系列選択的なニューロンの中にはニューロン同士が同期して活動するものも存在したことから、セル・アセンブリによって順序が表現されることが示唆される。前頭連合野では系列の前半から後半にかけて徐々に発火率が減少していくニューロンが存在した。このようなニューロンは試行の時間的な情報処理に寄与するものかもしれない。次にLFPの解析を行った。海馬で見られるLFPのシータ波(4-12Hz)は、記憶や学習に関与すると考えられていることから本研究においてもシータ波に着目して解析を行った。その結果、ラットがノーズポーク反応を持続している期間でシータ波のパワーが上昇した。前頭連合野においてもノーズポーク反応を持続している期間と移動中にシータ波のパワーの上昇が見られた。海馬と前頭連合野が相互作用することで記憶を想起し行動のプランニングなどが実現されると考えられることから、この両部位のシータ波のパワー上昇は、海馬と前頭連合野の相互作用による順序情報処理を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を進展させるためには、難しい行動課題を動物に訓練し、その行動課題遂行中のニューロン活動を記録することが必要であるが、行動課題の訓練方法や行動解析法を確立し、着実にニューロン活動の記録・解析を進めている。さらにスパイク活動とLFPを同時に記録し、それらの関係を検討するためには高度な解析技術を必要とするが、当初の計画通り海馬と前頭連合野から多数のニューロン活動を同時に記録し、一定の成果を示している。さらにLFPの解析方法を積極的に習得し、LFPのデータから海馬と前頭連合野の相互作用について一定の成果を示したことからおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
スパイクの同期活動とLFPの関係を解析することで順序情報を表現するセル・アセンブリの実態を詳しく検討していく必要がある。さらに、順序情報処理の神経メカニズムの実態を解明するために海馬と前頭連合野の相互作用についてもさらに詳細に検討していく。研究1は、個々のニューロンのスパイク活動とニューロン集団の集合的活動であるLFPの関係を解析することで順序情報を表現する神経メカニズムを明らかにする試みであるが、脳のダイナミックな情報表現を捉えるにはそれだけでは不十分である。そこで、研究2ではブレイン-マシン・インタフェース(BMI)技術を用いてニューロン活動を実験者が任意に強化することにより、それらのニューロン活動を可塑的に変化させ、変化が生じるプロセスにおいてもなお安定的に同一の順序情報が表現されることを示す。さらに、ニューロン活動の変化に伴うLFPの変化を解析することで、順序情報を表現する広範な神経回路網のダイナミクスを明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)