2013 Fiscal Year Annual Research Report
『源氏物語』の表現世界と現代語訳の創意の交渉に関する研究
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12J05276
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
大津 直子 白百合女子大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 谷崎源氏 / 旧訳 / 新訳 / 山田孝雄 / 玉上琢彌 / 谷崎潤一郎 / 翻訳 / 『源氏物語』 |
Research Abstract |
①創作と翻訳とはどのように交渉しているかという問題の検証 従来、谷崎源氏の研究は、源氏訳以後の創作行為にどのようにつながったかという点ばかりが検証されている。本年度は〈旧訳〉と、同時期に執筆された小説『猫と庄造と二人のをんな』に着目し、当時の編集者宛書簡と〈新訳〉草稿の書き入れとをもとに、翻訳と創作とが双方向の営為として互いに作用しあっていることを検証した。この点は表現世界と現代語訳の創意を論じる上で「交渉」をキーワードとする本研究が看過することのできない問題であった。成果は近々に活字化してゆきたい。 ②現代語訳試案の作成 「研究実施計画」に掲げていた現代語訳試案を作成した。 受け入れ研究室である白百合女子大学において、室城秀之教授、大学院生たちとともに「蓬生」巻を輪読し、その成果を同大学の紀要に発表した。 ③近代文学という領域における古典受容の検証--与謝野晶子の場合 昨年、当初の研究計画調書を大きく変更せざるを得なかったのは、ひとえにこれまで取り組んできた中古文学という領域と近代文学という領域との方法論があまりにかけ離れており、研究計画調書のやり方では近代文学の領域に切り込めないという課題とぶつかったためである。本年度は、近代文学を御専門とする國學院大學の上田正行教授のゼミに参加した。ゼミでは『みだれ髪』を中心とした与謝野晶子・鉄幹研究を扱った。晶子は『源氏物語』の愛読者として知られ、創作活動においても『源氏物語』の表現や筋書きを活かしたと知られる。こと、『みだれ髪』の詠みぶりは「源氏ぶり」とも呼ばれる。ゼミでの発表を経て、國學院大學院友学術振興会後期総会研究報告(2014年1月25日(土)於國學院大學院友会館)において「与謝野晶子の古典受容に関する一考察―『みだれ髪』冒頭歌を中心として」という論題で発表した。この成果もまた、ただいま活字化している最中である。 以上が本年度の研究実施状況の概略である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
谷崎源氏を古典のみならず近代の領域で論じてゆく方法がつかめてきた。また、翻訳と創作とは、一方向の影響下にあるのではなく、互いに交渉しあって成立しているのではないかという本研究のねらいと直結するテーマを扱うことが出来た点において、有意義な成果を挙げることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を学会誌等に投稿し、批判を浴びたい。また、調査をする過程で、『源氏物語』の文体で特に谷崎は「帚木」に注目していることが改めてわかったので、「帚木」の訳出にどのような工夫が凝らされているかという点を重点的に検証してゆきたい。
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Research Products
(6 results)