2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05301
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金原 大植 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 理論経済学 / 経済成長理論 / 経済動学 / マクロ経済 |
Research Abstract |
外生的技術進歩率を導入したR&D型内生的成長理論に関する既存研究は経済成長率を内生的に決定することが不可能な準内生的成長モデルに退化してしまっている.それに対し我々は複数均衡が存在し.その結果,2周期解やカオスが存在すれば外生的技術進歩率を導入した場合でも経済成長率を内生的に決定することができる外生的技術進歩率を導入したR&D型内生的成長モデルを構築している. 我々のモデルの均衡の安定性,周期解,カオス等の様々な非線型性を持つ振る舞いに関して分析を行うためにこれまでの研究を踏まえたうえで,2つの均整成長経路の安定性について分析を行った.外生的技術進歩率を導入したR&D型内生的成長モデルに対する動学的に厳密な分析はこれまであまりなされてこなかったが,それはこうした動学モデルを記述する差分方程式が定常状態を(外生的技術進歩率の存在から)適切に定義できる一般的な手法が存在しなかった事に有った.それに対してすでになされた我々の研究によって得られたCES型生産関数に最低限の変更を加えることでモデルの経済学的に望ましい性質を最大限維持したまま中間財バラエティと産出量を其々外生的技術進歩率で正規化した2変数に関する差分方程式に書き換える方法を用いて,中間財間の代替の弾力性が∞なケースに関してモデルを1変数の差分方程式で表すことに成功した.その結果として複数均衡の多曖気的安定条件を導出することが可能であった. また今後カオスの存在を証明するに対し,最近導出された動学モデルで扱いやすいunimodalityとiteratively expansivenessからエルゴードカオスを導く命題を利用することが有益であるが,この命題の各動学モデルでの含意を検討することは有益である.したがって2部門3要素モデルにこの命題を適応してエルゴードカオスの存在を証明する研究も並行して京都大学経済研究所の佐藤健治氏とともに行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルを1変数の差分方程式で記述することに成功し均整成長経路の安定性に関する分析は完了したが,その際に付加した仮定により元々のモデルが持っていた非線型性が失われ,カオスや周期解の分析には他の仮定を導き出して対処する必要があるため.
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Strategy for Future Research Activity |
外生的技術進歩率を導入したR&D型内生的成長モデルでの周期解,カオスの存在証明を行うために,非線型性を保ったまままモデルを1変数の差分方程式で表せるための追加的仮定を検討する. 2部門3要素モデルに関してはエルゴードカオスの存在を証明することに加えて,要素集約度の仮定によってはある種の不決定性が存在する可能性が示唆されたので,動学経路が要素集約度の違いによりどのように変化するのか研究する.
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