2012 Fiscal Year Annual Research Report
散逸項をもつ非線形シュレーディンガー方程式の解の幾何学的構造の研究
Project/Area Number |
12J05312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮路 智行 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 偏微分方程式 / 分岐解析 / 非線形シュレディンガー方程式 / 精度保証付き数値計算法 |
Research Abstract |
本研究ではLugiato-Lefever方程式(LL方程式)と呼ばれる,光共振器におけるパターン形成を記述する偏微分方程式モデルに対する空間局在的な解を研究する.本年度は二次元円板領域上における方程式の解構造が外力によってどのように変化するかを数学理論および数値計算を用いて解析した. 中心多様体理論により,空間一様な定常解が0次第1種Bessel関数状の回転対称な二種類の摂動に対して同時に不安定化する退化分岐点近傍において,分岐問題が二変数常微分方程式系の自明解の分岐問題に帰着することを示した.縮約方程式に対して数値分岐解析ソフトウェアAUTOを用いて解析を行い,この退化分岐点近傍ではパラメータの変化とともに空間一様定常解から分岐した非自明解のHopf分岐により時間周期解が生じ,さらに大域的な分岐現象により消滅することが数値計算で確認された.これは先行研究で報告されている空間局在的な時間周期解に生じる一連の分岐現象と類似のものであるが,円板上の肌方程式の自明解の退化した分岐点近傍では通有的に生じるものであることがわかった.これらの解構造の変化は,特定のパターンに対応するのみでなく,時間発展の途中経過に影響及ぼすためモデルの観点から重要である.これは空間一次元では観察されない現象である.空間局在解の分岐についてはSwift-Hohenberg方程式(SH方程式)について多くの研究があるが,SH方程式は変分構造をもつため時間周期解が生じない.肌方程式が変分構造をもたないからこその現象であり興味深い. 一方,境界条件に依存しない系の性質を考えるため,領域を全平面として考えるために,本研究ではTaylor model法による数値的検証法を用いて全平面におけるLL方程式に対する空間局在的な定常解の存在の計算機援用証明を目標の一つに挙げている.力学系の問題に応用するための一歩として,本年度はTaylormodel法によって Poincare写像の数値的検証法を考案した.これらの結果については論文にとりまとめ投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は二次元有界領域におけるLugiato-Lefever方程式の分岐解析を計画していた.数学的に厳密な証明を与えることは困難であり,中心多様体定理による問題の縮約の妥当性を証明するにとどまったが,数値分岐解析によって,回転対称な解に生じうる一連の分岐現象がLL方程式の解にある意味で普遍的なものであることを見出すことができた.先行研究をさらに深めた結果であり,数理解析として意味のある結果であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
二次元全平面におけるLugiato-Lefever方程式の空間局在的な定常解の存在問題を考える.問題はある種の構造をもつ四次元の非自励的ベクトル場に対するホモクリニック軌道の存在問題に帰着する.自明解から空間局在解が分岐しうることは分岐理論の応用で証明できると期待するが,応用上意味のある安定な空間局在解は分岐理論の枠組みでは捉えられないと予想される.そこで,精度保証付き数値計算法による計算機援用証明を行いたい.計算機援用証明を行うには方程式の数値解を高精度に求める必要があると考えられる.そのために,Taylor mdel法を用いるが,力学系の問題に応用するための方法を考案する必要があるので,基本的な道具立てを用意しながら問題に取り組む.
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Research Products
(11 results)