2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代アフリカ社会における異形排除と寛容性の研究-タンザニアのアルビノ殺害を事例に
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12J05334
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 友貴恵 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンザニア / 障害史 / 障害学 / アルビノ / 植民地主義 |
Research Abstract |
7月までは前年度に引き続き日本国内における文献調査を行い、修論を補足して日本ナイル・エチオピア学会大会で発表した。また、タンザニアの国勢調査の分析から、近年新たに「アルビノ」が障害の1カテゴリとして出現し数え上げられている現状を明らかにし、これを関西社会学会大会で発表した。 8~10月はタンザニアのダルエスサラームにおいて、アルビノ支援活動を行っているNPOに聞き取り調査を行い、活動経緯やタンザニアでアルビノが置かれる社会的状況などについて情報を得た。また、次年度以降の調査に不可欠となる関係者ら(NPO関係者、特別教育関係者、大学教員、「障害」を持つタンザニア人等)と面会し、関係を築いたことは大きな成果であった。 現地における聞き取りや観察は、それまでの報告者の研究を批判的に捉え直す契機となり、今後研究を展開する上で重要な示唆をもたらした。また、本研究において重要なのが聞き取り調査であるが、この調査の基礎となるタンザニア国語(スワヒリ語)運用能力も飛躍的に向上した。スワヒリ語運用能力は次年度以降の調査を円滑かつ実り多いものにするために非常に重要な要素であるため、今年度のタンザニアにおけるフィールドワークは十分に意義があったと言える。 3月には3週間イギリスに滞在し、英国国立文書館および国立図書館等において植民地期に関する文献史料調査を行った。史料調査からは、従来のいわゆる「非西欧社会における障害」扱う障害学的研究ではあまり顧みられなかった大戦後の植民地出身兵への障害年金に関する史料を発見した。現在分析途中であるが、これは今後の研究を展開する指針となり得る重要な史料だと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は3年間の研究計画初年度、また現地入り初年度ということで、次年度以降の現地調査を円滑に進め得る基礎を固めることが第一の重要項目だった。それに関し、調査地において関係者となり得る人々と面会し関係を築けた、あるいは次年度以降について意見を交わせた点、言語運用力が調査に足り得るまでに高まった点、予備的聞き取り調査が行えた点等は、目標程度を十分達成するものだった。イギリスでの文献調査に関しては時間不足もあり網羅的に調査を行えたとはいえないものの、重要な文献を一定程度収集でき、実りのある調査となった。 ただ、研究発表については、目標である年度内1本以上の論文執筆・発表を達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時点における次年度の計画としては、タンザニアだけでなく周辺諸国においてインタビュー調査・文献調査を実施し比較するとしていたが、今年度の現地調査から、タンザニアにおいてアルビノに関する情報収集が想定以上に困難でありかつ研究蓄積が浅いこと、現地調査を行う準備にかかる時間的・経済的コストが想定以上であることがわかった。そのため国際比較ではなくタンザニアにおける調査に注力し、タンザニアの事例の情報を広く収集し、また歴史的にも深く掘り下げることで目的としていた課題に取り組む。また、従来はアルビノに関する情報のみを注視する傾向があったが、アルビノを中心的対象としつつも、特別教育や障害史を見るうえでアルビノ以外の身体障害者の事例にも目配りして研究を進める。
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