2012 Fiscal Year Annual Research Report
スポータの存在論証を基軸としたインド中世言語理論の判読と統合
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12J05455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斉藤 茜 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 言語論 / インド哲学 / スポータ理論 |
Research Abstract |
報告者は今年度の半分以上をハンブルク大学アジアアフリカ研究所での研究遂行に費やした。当地では主に三つの作業を並行して行った。1)マンダナ著作『スポータの論証』の翻訳研究:当該文献及びその注釈を、後半部を中心に翻訳した。論題のひとつとして、言語認識における「誤った認識」とはどのように「誤って」いるのか、というテーマでマンダナが自身のスポータ理論を説明する箇所において、従来他文献での同様の議論に引き摺られマンダナの独自性は語られてこなかったが、報告者は彼の「誤った」のニュアンスが他文献とは異なることを明らかにした。2)ハンブルク大学のHarunaga Isaacson教授の協力を得て、仏教経量部ダルマキールティ著作『プラマーナ・ヴァールッティカ』中の、『スポータの論証』引用箇所を写本を用いながら検討した。マンダナとダルマキールティの言及関係については先行研究は殆どカバーしておらず、思想交流の内容が明らかではなかった。報告者はこの研究によって、経量部の言語論とマンダナの言語論の違いと、論争が起こる原因を明らかにした。3)マンダナの後期の著作『ブラフマンの立証』第一章の読解研究を、ネパール写本研究所の張本研吾先生の協力を得つつ行った。『ブラフマンの立証』では知識と行為の関係が説かれるが、それは『スポータの論証』で展開される言語哲学と本質的には同一であり、マンダナの言語論の根幹を究明する大きな手がかりとなる。第一章の内容は哲学的には聖典解釈学派知識部に立脚するものであるため、報告者は知識部の研究者を交えた研究会という形を採り、当時の知識部の主張とマンダナの主張の相違の検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハンブルク大学での調査が長期に亘ったため、当初年次計画に記載していた日本での活動のいくつかは延期せざるを得なかったが、それ以上にドイツでの研究は実り多いものとなっている。帰国後日本で予定していた活動を消化するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
ハンブルク大学での調査を継続し、上記2)3)の研究に区切りをつける。また海外の研究者との連携を密に取り、語学力の改善とともに同分野の研究者とのコミュニケーションをとる。日本に帰国後は博士論文の執筆に集中する。
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Research Products
(4 results)