2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05469
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 陽平 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際機構 / 国際連合 / 平和維持活動 / 国際責任法 / 行為帰属 / 多国籍軍 / 武力行使の授権 / 安全保障理事会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際機構の活動をめぐって生じうる国際責任の成立要件についての体系的な研究の完成である。国際機構も、国家と同様、自然人またはその集団を通じてのみ行動できることに鑑みれば、いかなる要件が充足されればそのような自然人の行為が国際法上国際機構の行為とみなされるのか、すなわち行為帰属論が主要な論点となる。国際機構が国際法上責任を負いうる主たる場面は、国際連合の指揮統制下で行われる平和維持活動(PKO)と、安全保障理事会による武力行使の授権に基づくものの各部隊派遣国または国連以外の国際機構の指揮統制下で行われる多国籍軍型平和活動である。 前者については、前年度中に行った資料収集・インタビューに基づいて、公表論文のかたちでまとめることができた(平成25年4月脱稿)。 後者については、前者に関する研究で得られた結論に基づいて、国連指揮下に置かれるいわゆる平和維持軍(PKF)とそうではない多国籍軍とをカテゴリカルに区別することは、行為帰属の観点からは必ずしも説得的ではないという結論が得られた。これについても、研究会やセミナー等における国内外の研究者との議論を経て、公表論文のかたちにまとめた(平成26年1月脱稿)。 また上記二本の論文では、行為帰属とは理論的には区別されるものの、関連法規則の発展過程の観点からは切り離すことのできない他の問題にも触れている。すなわち、自身の権利を侵害されたと主張する者が国際機構の責任をいかに追及するか、どのように救済を得ることができるかという責任法の手続的な側面に係る問題である。平成25年度の研究から、行為帰属論と手続論とは、国際機構法と国際責任法双方の要請のはざまで相互に連関しながら変容しているということが明らかになった。平成26年度は、その変容過程を体系的に分析することで、国際機構法と国際責任法の今後の発展について有益な視座を提供することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目標は、本件研究の軸となる二本の論文を完成させることであった。そして、一本目については平成25年4月に、二本目については平成26年1月に脱稿することができた。前者については一部のみ既刊、後者については未刊ではあるが、順次刊行されることになっている。また平成26年度は本件研究の完成が求められるが、これまでの達成度に鑑みればそれは十分に可能であるといえる。そのため、おおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
上で指摘したように、これまでは主に行為帰属論の観点から研究を遂行してきた。これが本件研究の軸を構成するのは確かであるが、国際機構法と国際責任法の関係を体系的に分析するためには、責任追及・救済手続の観点からの研究も不可欠である。この手続的な側面は行為帰属論と不可分に結びついている。そのため、これまでも一定程度手続論を射程に含めた研究を行ってきた。今後は、行為帰属論および手続論が国際機構法と国際責任法のインターフェイスを構成しているということ、それぞれの法に係る要請が行為帰属と手続を規律する法規則の全体にいかなる影響を与えてきたのか、そして今後与えてゆくのかを明らかにすることを目標にする。そして、本件研究の成果を博士論文として完成させることとする。
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Research Products
(3 results)