2012 Fiscal Year Annual Research Report
感性工学に基づく映像コンンテンツの最適表示技術の開発に関する研究
Project/Area Number |
12J05491
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
井ノ上 寛人 東京電機大学, 未来科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | コンピュータグラフィックス / カメラワーク / 主観評価 / 眼球運動 / 感性 |
Research Abstract |
近年の高画質ディスプレイの普及に伴い,映像コンテンツの需要は今後も拡大する傾向にある.このような市場の動向から,生産者側には映像コンテンツの効率的な制作が求められており,その対策の一つとして,CG(Computer Graphics)カメラの自動制御技術に関する研究開発が進んでいる.しかし,従来までに提案されているシステムは,(A)小画面で観賞した際に迫力感を与える動的カメラワークを構成したが,その動きを大画面で観賞すると酔いや疲労感を生じさせる可能性がある,(B)反対に,大画面で観賞した際に迫力感を与える動的カメラワークを構成したが,その動きを小画面で観賞するとつまらなくなる可能性がある,といった課題を抱えており,安全面と品質面において更なる検討を必要としているのが現状といえる.本研究は,観賞時の視距離や画面サイズ(画角)をCGカメラの制御パラメータとして取込み,「観賞条件」と「映像表現上の意図/目的」に応じて,CGカメラを最適に自動制御できるアルゴリズムの開発を目的とする. 本年度は,コンテンツ依存性を考慮してCG映像の動的カメラワークを評価するために,CGの情景映像をランダムドット(RD)に変換するシステムを開発した.元のCG映像と変換したRD映像を比較し,コンテンツ依存性を考慮して映像の運動パタンを評価した結果,(1)酔いや疲労感は,楽しさや迫力感に比べて,「映像の運動パタン」,「映像の描画内容」,「観賞時の画角」の3要因が複合的に作用すること,(2)酔いや疲労感を与える動的カメラワークは,跳躍性眼球運動を通常よりも抑制し得ることを明らかにした.また,当初の研究計画に加え,(3)随従性眼球運動および固視時に雑音として計測される微小な眼振(固視微動)の個人差は非常に大きいうえ,固視微動は運動錯視の生起メカニズムと関係することを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画で示した「コンテンツ依存性を考慮してCG映像の動的カメラワークを評価するために,映像の描画内容をランダムドット化する手法」を予定通りに開発し,この提案手法に基づいた実験を行っている.その結果として,目的とするCGカメラの自動制御アルゴリズムを開発する上で有用な知見を得ると共に,当初の研究計画に加えて,運動の知覚/評価と眼球運動の関係について,新規性のある知見を明らかにしている.
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Strategy for Future Research Activity |
跳躍性眼球運動を抑制する動的カメラワークは,酔いや疲労感を与える可能性が明らかとなったが,この特徴の抽出や定量評価を実施する上で,固視微動の個人差が問題になることが明らかとなった.この新たに明らかとなった課題は,本研究を遂行する上で解決を必要とする重要なものといえる.その対応策として,固視微動の個人差の特徴を分析するための実験を行うと共に,眼振の計測値から跳躍性眼球運動を抽出するための個人対応型フィルタを開発する.その次に,当初の研究計画通り,本研究で明らかとなった実験結果と考察を踏まえて,目的とするCGカメラの自動制御アルゴリズムを開発する.
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Research Products
(6 results)