2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高速時間分解赤外分光法による励起状態プロトン移動反応の反応ダイナミクス研究
Project/Area Number |
12J05526
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
近藤 未菜子 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 時間分解振動ダイナミクス / 水素結合相互作用 / 溶媒和ダイナミクス / アミノフタルイミド |
Research Abstract |
本研究は励起状態の化学反応ダイナミクスへ溶媒分子と反応プローブ分子の水素結合形成がどのように影響を及ぼすのかということに注目している。当初予定していたヒドロキシキノリンでは必要な濃度で溶液を調整することが難しいため、プローブ分子の変更を行った。用いた4-アミノフタルイミド(4-AP)は蛍光プローブとして知られる分子であり極性溶媒中では励起状態で電荷移動反応することが知られている。4-APは溶媒和、回転緩和ダイナミクスの測定に多く用いられている。近年では、逆ミセル内の制限空間内の溶媒やイオン液体などより複雑な系へ応用されている。プロトン性溶媒中ではその電子スペクトルのピーク位置が溶媒の極性から予想されるピーク位置から大きくずれること、蛍光消光がおこることが知られている。これは、基底状態および励起状態の4-AP分子が溶媒分子と水素結合錯体を形成することで、エネルギー状態が非プロトン性溶媒中に存在するときよりも安定化されることが原因と考えられる。このように、4-APは蛍光プローブ分子として盛んに研究され様々な系へ応用されているにもかかわらず、励起状態の振動ダイナミクスの研究はこれまでされていない。そこで、本研究では4・APの励起状態のカルボニル基の振動モードの時間変化を測定する。また、量子化学計算も行い得られた計算結果と実験結果を比較することにより、励起状態における4-APの振動ダイナミクスを詳細に研究することを目的としている。今年度は、基本的な電子スペクトル測定とFTIR測定によって基底状態4-APのカルボニル基の振動モードを様々な溶液中で測定し、分光データの蓄積とその解析を行った。次に、サブpsの時間分解能を持つ可視ポンプ赤外プローブ分光法を用いることにより励起状態のカルボニル基の振動伸縮モードを過渡吸収スペクトルとして測定した。また、同様の実験をイミド基の水素をメチル基置換した4-アミノ-N-メチルフタルイミド(4-AMP)でも行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解振動分光法に携わるのは初めてであり、増幅器を用いた実験も始めてであった。そこで初年度は可視ボンプ赤外プローブ分光法に必要な基礎的な定常状態の電子スペクトル測定、FFTIR測定実験をも行い測定装置の原理や使用方法の学ぶことに力点をおいた。また、測定データを解析するためのプログラム開発を行う必要があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
量子化学計算(Gaussian09)を行い平成24年度に得られた測定データと比較を行うことによって基底状態、励起状態の振動モードのより詳細な議論を行う。量子化学計算として用いるDFT、TDDFT計算はそれぞれ基底状態、励起状態での振動モードの計算に用いられており、溶媒分子と水素結合錯体を形成した分子モデル、錯体を形成していない単分子での振動数計算を行う。さらに、非極性溶媒と非プロトン性またはプロトン性溶媒との混合液体中で本年度と同様の実験を予定しており、プローブ分子が純溶媒中とは異なる溶媒構造中で振動モードがどのように変えられるのか議論を行う。
|
Research Products
(6 results)