2013 Fiscal Year Annual Research Report
超高速時間分解赤外分光法による励起状態プロトン移動反応の反応ダイナミクス研究
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12J05526
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
近藤 未菜子 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 時間分解振動ダイナミクス / 水素結合相互作用 / 溶媒和ダイナミクス / アミノフタルイミド |
Research Abstract |
溶質-溶媒間相互作用は化学反応ダイナミクスや構造決定において重要な役割をはたしている。本研究において注目している4-アミノフタルイミド(4-AP)同様に分子内にプロトン受容体が存在する蛍光プローブ分子、クマリン類似体とフルオレノン類似体、そして4-AP類似体の蛍光特性とその非放射過程が調べられてきた。その結果, プロトン性溶媒中での蛍光消光がフルオレノン類似体と4-AP類似体では顕著であるのに対し、クマリン類似体では顕著な蛍光消光は見られなかった。フルオレノン類似体と4-AP類似体では励起状態においてプロトン受容体となるカルボニル基に負電荷が局在化しているのに対し、クマリン類似体においてはカルボニル基ではなく分子全体に負電荷が非局在化していることが量子化学計算結果と合わせて報告された。励起状態の負電荷の分布が水素結合錯体形成および、非放射過程に影響を及ぼすことが結論付けられた。一方、フルオレノン類似体と4-AP類似体では励起状態でプロトン受容体に電荷が局在化しているという同様の性質を示すにもかかわらず、プロトン性溶媒中の非放射過程の溶媒依存性が異なることが報告されている。そこで、本研究は励起状態における4-AP類似体のカルボニル基の振動ダイナミクス測定を行うことにより、水素結合形成開裂のダイナミクスが蛍光特性とどのように関連付けられるのか議論を行うことを目的としている。今年度は、4-AP類似体の過渡IR吸収スペクトル測定とその解析を行った。また量子化学計算であるDFTとTDDFT計算を組み合わせることによって過渡吸収バンドのアサインメントを行った。さらにバンドの時間依存性をプロトン性溶媒中と非プロトン性溶媒中で比較し、励起状態において4-AMP溶媒分子と新たに形成する水素結合形成開裂のダイナミクスをカルボニル基振動ダイナミクスから測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子化学計算(Gaussian09)を行い、測定デー夕と比較を行うことによって基底状態、励起状態の振動モードのナサインメントを行った。測定データの解析用プログラムの改良によって、得られた測定データの振動バンドを詳細に解析することに力点をおいた。また、先行研究の文献から励起状態振動ダイナミクス研究の基礎知識を学び本研究で測定された振動ダイナミクスの議論へ応用した。
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Strategy for Future Research Activity |
凝縮相中における分子間の相互作用として、これまで注目してきた溶質-溶媒分子間水素結合があげられるが、その他の分子間相互作用として溶質-溶質間相互作用である2量体形成がある。シアノインドール(CI)は分子内にァロトン供与体(イミド基)とプロトン受容体(シアノ基)の両方を持つており、シアノ基を7位に持つ7-CIは5位や6位に持つ5-CIや6-CIでは見られない2量体の形成が考えられる。そこで、本年度まで同様のFRIT測定と赤外ボンプ-プローブ分光法を用い水素結合錯体、二量体、単量体での振動ダイナミクスを比較し、分子間相互作用が振動ダイナミクスへ及ぼす影響を議論する。
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Research Products
(11 results)